【各論】妊娠・分娩・産褥の経過

広告
【各論】妊娠・分娩・産褥の経過
広告

妊娠の成立

妊娠は、精子と卵子が出会い、受精し、受精卵が子宮に着床することで成立します。

妊娠には7つの条件があり、受精後6~7日ほどで成立します。

妊娠成立7つの条件

①排卵 (卵子の受精能力は24時間)
②卵子が卵管内に取り込まれる
③射精(精子の受精能力は72時間)
④精子が卵管膨大部まで進入する
⑤受精
⑥受精卵が子宮腔内に運ばれる
⑦ 着床 (子宮体部)

妊娠の経過

妊娠22週以後に、 胎児と付属物 (胎盤・臍帯 羊水・卵膜) が子宮から排出されることを分娩といいます。 排出された時期によって呼び方が異なります。

妊娠週数による区分

流産 妊娠21週6日 ( 22週未満) の中絶
早産 妊娠22週0日から妊娠36週6日 ( 37週未満) の分娩
正期産 妊娠37週0日から妊娠41週6日 (42週未満) の分娩
過期産 妊娠40週0日以降の分娩

分娩予定日の判定

一般的には、月経の遅れによる妊娠確認のために受診される方がほとんどです。

この日に着床したと確実に分かることは稀です。

そのため、最終月経、基礎体温、超音波断層法などで妊娠の時期を判断します。

 最終月経による判定方法 (ネーゲル概算法)

最終月経を含む月に9か月を加えるか、 3か月を引いて分娩予定の月を出します。

そして、 最終月経の第1日に7日を加えて分娩予定日を算出します。


例) 最終月経開始日が1月2日の場合
分娩予定日:
 1月   2日
+9か月 +7 日
 10 月 9日
分娩予定日:10月9日

例) 最終月経開始日が7月29日の場合
分娩予定日:
  7月 29日
-3か月 +7日
 4月  36日
→4月は30日までなので
36-30=6 (日) 繰り越し
分娩予定日:5月6日

※この計算方法は、 月経周期を28日としているので、月経周期の長短によって誤差が生じます。

基礎体温による判定方法

基礎体温上の排卵日から判定する方法です。


基礎体温の排卵日と判定される日に、266日 (280日114日)を加えて分娩予定日
を算出します。(排卵日の月に8を加え、 その日に24を加えると算出できます)


※1 分娩予定日・・・ 「最終月経の第1日に280日 (40週) を加えた日」
※2 月経周期が28日型であれば、 月経初日から14日目に排卵が起こる。

超音波断層法による判定法

超音波断層法によって、子宮内の胎嚢計測値、胎児頭殿長、児頭大横径の計測値を測定
し、その値から判定する方法です。

子宮の変化

妊娠すると、子宮はどんどん大きく変化していきます。

妊娠週数大きさの目安
3週鶏卵大
7 週鵞卵大
11週手拳大
15週腹壁上から子宮体部が触れるようになる
19週頃胎児触知可能

妊娠初期には、受精卵の着床部位は血液の供給が多いため、子宮の他の部位よりも早く発育します。

そのため、子宮は左右対称に大きくならず、この着床部だけが腫瘍ができたように柔らかくふくらんできます。この膨らむ現象をピサチェク徴候といいます。


胎児の成長の指標となる子宮の大きさを知るには、恥骨結合の上縁から腹壁の表面に沿って子宮の底までの長さ(眼底長)を測定します。

正しく測定するためには、しっかりと正しい方法で測定する必要があります。仰臥位で膝を伸ばした状態で、恥骨結合の上縁から子宮底までの長さを巻尺で測ります。

「あっ、動いた!」 突然、 お母さんが言いました。 胎児が動いた (胎動) 瞬間です。

では、いつ頃胎動を感じるのでしょうか? 経産婦と初産婦では、少し違いがあります。
経産婦 16~18週 (妊娠16週は胎盤が完成する週数です)
初産婦・・・ 18~20週

胎児が動いても最初は静かなので、腸の蠕動運動と間違えやすいのですが、経産婦さんは一度経験しているので、初産婦より少し早く胎動に気づきます。

胎児はお腹の中でどのような胎位にあるのでしょうか?


正常な胎位は、胎児の頭部が子宮口に最も近い位置で、これを頭位といいます。

分娩の経過

分娩は、胎児とその付属物が母体から排出される過程です。

分娩第1期から分娩第3期までの過程です。分娩第3期で分娩は終了しますが、胎盤を娩出した後に異常出血が起こることがあり、分娩後2時間程度は分娩室で観察されます。

これを第四期観察分娩といいます。それでは、分娩の各段階の経過をみていきましょう。

第1期は、出産が始まってから子宮口が全開になるまでの期間です。

分娩が近づくと、個人差はありますが、お腹が張ったり、時には痛みを感じたりすることがよくあります。しかし、これは前駆陣痛と呼ばれるもので、分娩が始まったというわけではありません。

陣痛の始まりは、「胎児を出産するまで続く、10分以内または1時間に6回程度の規則的な陣痛(収縮)の周期」と定義されています。

陣痛は子宮口を開かせる原動力であり、分娩が進むにつれて子宮口が開いていきます。

陣痛の第1段階では、破水が起こります。破水とは、卵膜が破れ、羊水が流れ出ることです。

奥の子宮の次が第二期分娩です。

第2期分娩は、子宮口が全開してから胎児が娩出されるまでのことです。

子宮口が完全に開いていると、裂け目から赤ちゃんの頭の一部が見え、陣痛中は見えません。

このように赤ちゃんの頭が部分的に見えることを排臨といいます。これを繰り返すと、間欠的な陣痛のときにも赤ちゃんの頭が見えるようになります。この状態を発露といいます。そして、陣痛と痛みによって胎児は娩出されます。

胎児娩出が終わると、次の段階は胎盤娩出です。

分娩の第3段階は、胎児娩出から胎盤娩出までです。

胎盤が娩出されると分娩は終了します。

分娩開始から胎盤娩出までの所要時間(分娩第1期から分娩第3期までの総時間)が分娩時間です。初産婦の平均分娩時間は12~15時間、経産婦の平均分娩時間は5~8時間です。

この時間の差は、初産婦と経産婦の子宮口の開き方の違いによるもので、助産婦は初産婦の平均半分の時間を要しています。

胎盤が娩出されれば出産は完了し、ほっと一息つくことができますが、異常出血が起こりやすくなります。
しかし、異常出血が起こりやすくなります。第4期分娩では、分娩終了後2時間程度、分娩室で全身状態や出血の状態を観察します。
分娩時の出血量は、第4期分娩とほぼ同じです。分娩時出血量には、分娩第4期までの出血量が含まれます。
500mL 以上は異常出血です。

分娩各期期間
分娩第1期分娩開始から子宮口全開大まで
分娩第2期子宮口全開大から胎児娩出まで
分娩第3期胎児娩出から胎盤娩出まで
分娩第4期分娩後2時間まで

産褥の経過

産褥の定義
分娩が終了し、 妊娠・分娩によって生理的に変化した母体が非妊時の状態に回復するまでの期間 (およそ6~8週間)をいいます。

1. 子宮復古

出産直後の子宮底は臍より横指3本分下にあり、その後時間とともに上昇し、12時間後には臍の高さに到達します。その後、子宮底は再び下降し、産後1日目に臍より横指1本分、3日目に臍より横指3本分、産後10日目以降は腹壁にほとんど接触しなくなります。

悪露
産褥中に子宮および膣から排泄される分泌物を悪露という。
一般的にみられる変化は以下のとおりです。
産褥3日頃まで・・・・・・・・ 赤色悪露
産褥4日~9日頃・・・・・・ 褐色悪露
産褥10日~14日・・・・・黄色悪露
産褥2週~6週・・・・・白色悪露

※悪露の排泄がみられなくなるのと、子宮が非妊時の状態に戻るのがほぼ同じです。

2. 乳汁分泌

胎盤が排出されると、プロラクチンを抑制していたエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少し、プロラクチンの作用が活発になり、 乳腺が乳汁を産生するようになります。 そこに児の乳頭への吸啜刺激が下垂体後葉からのオキシトシンの分泌を促し、乳汁を圧出 (射乳)します。


プロラクチン・・・ 乳汁産生ホルモン (脳下垂体前葉)
オキシトシン・・・射乳ホルモン (脳下垂体後葉)
※オキシトシンは子宮筋も収縮させるので、直接授乳は子宮の復古 (収縮) を促進させます。

※初乳と成乳の違い

初乳: 蛋白質が多い。 黄身の色。
成乳 :乳脂肪が多い。 このためエネルギーが高く白っぽい。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

タイトルとURLをコピーしました