【必修問題】人間と欲求

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【必修問題】人間の特性

看護師国家試験出題範囲 目標Ⅱ.看護の対象および看護活動の場と機能について基本的な知識を問う。の『大項目』中に「人間の特性」があり、『中項目』には今回のタイトルである「人間と欲求」があります。小項目として問われる内容は以下のとおりになります。

  • 基本的欲求
  • 社会的欲求
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基本的欲求

ここでは、日本の看護教育で良く使用されるヘンダーソンの14の基本的欲求について説明します。

ヘンダーソン

人間には基本的欲求があり、必要な体力、意志、知識があれば、それを主体的に満たすことができるという看護理論に基づき、14の基本的欲求を提唱しています。

ヘンダーソンの14の基本的欲求は以下となります。

  1. 正常に呼吸する
  2. 適切に飲食する
  3. あらゆる排泄経路から排泄する
  4. 身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する
  5. 睡眠と休息をとる
  6. 適切な衣類を選び、着脱する
  7. 衣類の調節と環境の調整により体温を保つ
  8. 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
  9. 環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
  10. 自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションをもつ
  11. 自分の信仰を実践する
  12. 達成感をもたらすような仕事をする
  13. 遊び、あるいはさまざまなレクリエーションに参加する
  14. “正常”な発達および健康を導くような学習・発見をする。あるいは好奇心を満足させる

構成要素と情報の範囲を以下に示します

 
構成要素 情報の範囲
1.正常に呼吸する 呼吸数、肺雑音、呼吸機能、経皮的酸素飽和度、胸部レントゲン、呼吸苦、息切れ、咳、痰喫煙歴、アレルギー、自宅周辺の大気環境
2.適切に飲食する 自宅/療養環境での食事(水分含む)摂取量、摂取方法、嗜好品、アレルギー、身長、体重、BMI、必要栄養量、身体活動レベル、食欲、嚥下機能、口腔内の状態、嘔吐、吐気、血液データ(TP、Alb、Hb、TG)
3.あらゆる排泄経路から排泄する 排泄回数、性状、量、尿意、便意、発汗、in-outバランス、食事、
水分摂取状況、麻痺の有無、腹部膨満、腸蠕動音、血液データ(BUN、Cr、GFR)
4.身体の位置を動かし、よい姿勢を保持する ADL、麻痺、骨折の有無、安静度、MMT、ドレーン、点滴の有無、生活習慣、認知機能、呼吸機能
5.睡眠と休息をとる 自宅/療養環境での睡眠時間、パターン、疼痛、掻痒感の有無、入眠剤の有無、疲労の状態、療養環境への適応状況、安静度、騒音の有無、ストレス状況
6.適切な衣類を選び、着脱する AOL、運動機能、認知機能傷害の有無、麻痺の有無、活動意欲、点滴、ルート類の有無、発熱、吐気、倦怠感
7.衣類の調節と環境の調整により体温を保つ 体温を生理的範囲内に維持するバイタルサイン、療養環境の温度、湿度、空調状況、発熱の有無、感染症の有無、ADL、血液データ(WBC、CRP)
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する 自宅/療養環境での入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無、爪、鼻腔、
口腔の保清、尿、便失禁の有無
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする 自宅/療養環境での危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能、
術後せん妄の有無、皮膚損傷の有無、感染予防対策(手洗い、面会制限)、血液データ(WBC、CRP)
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションをもつ 表情、言動、性格、家族/医療者との関係性、言語障害の有無、視力、聴力、認知機能、メガネ、補聴器等の有無、脈拍数、呼吸数、面会者の来訪の有無
11.自分の信仰を実践する 信仰の有無、価値観、信念、信仰による食事、治療法の制限
12.達成感をもたらすような仕事をする 職業、社会的役割、入院、疾患が仕事/役割に与える影響
13.遊び、あるいはさまざまなレクリエーションに参加する 趣味、休日の過ごし方、余暇活動、入院、療養中の気分転換方法、
運動機能障害、認知機能、ADL
14.“正常”な発達および健康を導くような学習・発見をする。あるいは好奇心を満足させる 発達段階、疾患、治療方法の理解、学習意欲、認知機能、
学習機会への家族の参加度合い

社会的欲求(マズローの欲求5段階説について)

社会的欲求を解説するにはマズローの欲求5段階説を知らなければいけませんので、解説します。

マズロー

マズローの欲求5段階説。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求を5段階の階層に分けて理論化しました。

マズローは「人間は自己実現に向かって常に成長している生き物である」と提唱し、この理論は「自己実現理論」とも呼ばれています。

この理論によると、人間の基本的欲求は「5段階のピラミッド」のようになっていて、一番下の欲求が満たされると、一番上の欲求が現れるというものです。

画像出典元:マズロー(心理学者)の欲求5段階説(自己実現理論)!この法則を示した図と、マーケティングへの応用論の解説

マズローの欲求5段階説

  1. 「生理的欲求」
  2. 「安全・安定の欲求」
  3. 「所属と愛の欲求(社会的欲求)」
  4. 「承認の欲求(尊厳欲求)」
  5. 「自己実現の欲求」

①生理的欲求

生理的欲求とは、「生きていくために必要な基本的・本能的な欲求」のことです。

人間の本能である「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」が当てはまり、これらが満たされないと生命を維持することは不可能です。

一般的な動物がこのレベルを超えることはないが、人間がこの階層にとどまる状況は一般的ではありません。しかし、例えば、いつも夜遅くまで仕事をしていて、睡眠や食事が十分にとれない人もいます。

次の階層に進むためには、まず最下層の「生理的欲求」が満たされなければなりません。

②安全の欲求

安全の欲求とは、「心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求」です。

危険な状況から抜け出したい、少しでも安全だと感じられる環境で暮らしたいという欲求につながります。

この欲求は、まだ発達途中の幼児に顕著に現れますが、大きくなるにつれて自然と次の欲求に移っていきます。

③社会的欲求(所属と愛の欲求)

社会的欲求は、「友人や家庭、会社から受け入れられたい」という欲求のことです。

集団への帰属や愛情を求める欲求であり、「帰属欲求」や「所属と愛の欲求」とも表現されます。

この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなり、鬱に陥るケースもあります。

人間には何らかの社会や集団に所属して安心感を得たいという欲求があり、自分を受け入れてくれる親密な他者の存在が不可欠だと言えるでしょう。

人間には何らかの社会や集団の中で安心したいという欲求があり、自分を受け入れてくれる身近な他者の存在が不可欠です。

我々医療従事者が一番関わるのはこの段階の欲求(社会的欲求かもしれません)

④承認欲求(尊厳欲求)

承認欲求は、「他者から尊敬されたい、認められたい」という欲求こと。

集団に属して愛情を受けたいという欲求のことで、「帰属欲求」とも表現されます。

この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会不安が生じ、場合によってはうつ病になることもある。

承認欲求には、低位と高位の2つに分類されます。

  • 低位の承認欲求:他人からの賞賛や注目、尊敬によって満たされる
  • 高位の承認欲求:自己尊重や意識づけ、自立性を得ることで満たされる

低位は他人からの賞賛などによって満たされるレベルのことですが、高位のレベルになると他人からの評価よりも自分自身の評価を重視する傾向になります。

この承認欲求が満たされず妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。

⑤自己実現の欲求

自己実現の欲求は、「自分の世界観や人生観に基づいて『あるべき自分』になりたいと願う欲求」のことです。

「自分にしかできないことを成し遂げたい」「自分らしく生きたい」「理想の自己像に近づきたい」という欲求です。

この欲求は、マズローの欲求5段階説の中で最も高く、それまでの段階の欲求とは質的に異なり、①~④を満たすことによって実現されます。

第6の欲求(おまけ)

マズローの欲求段階説は、基本的に5段階です。実は、5段階に続く6段階があります。それは「自己超越」という段階です。

マズローは晩年、個人的な利益を超えて仲間や社会に貢献したいという欲求を、5段階の欲求階層の上にある第6段階に位置づけました。

これは、自分の個人的な利益のためではなく、純粋に自分の国やコミュニティのために何らかの目的を達成したいという欲求です。

この自己超越の欲求は、貧困や病気で苦しむ人々を救うために生涯を捧げたマザー・テレサのような見返りのない慈善的欲求です。

例えば、日本では、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害からユダヤ人難民約6000人を救った外交官・杉原千畝の人道的慈善活動は、この6段階の精神状態と言えるでしょう。

国境、宗教、戦争を越えた杉原の偉業は、後年、ヤド・ヴァシェム賞(「諸国民の中の正義の人」)を受賞することになりました。


国際的な関係で受賞は逃したが、ノーベル平和賞は本来、個人の利害を超えて広く社会に貢献した人に贈られる賞です。「国際平和」「人権擁護」「保健衛生」「博愛」「環境保全」「民主主義・民族独立のための非暴力運動」など、人類全体の幸福に貢献する活動は、マズロー理論の発表を待たずとも、同賞の最も価値ある活動として認識され得るのです。

思えば、エウスカヤ研究所も、呼吸法やボディワークの普及活動を通じて、いつのまにか社会全体のための活動に誘われていました。自然の流れに沿って、マズローの描いたピラミッドを一歩一歩登っていきます。

シックハウス問題を提唱し、健康住宅を訴えた経験を欲求の階層に当てはめると、「生理的欲求」「安全欲求」といった健康な生活の基本を向上させ、自分だけでなく仲間の健康(第3層の社会・帰属欲求)を守ることでもあることがわかります。

その結果、建築業界にとっては、住む人の健康をより守ることができる住宅を建てることで、売り上げ増に貢献し、利益を得ることができる理想的なものだったようです。

20世紀末に社会を調査したマズローは、この段階に達しているのは人口の2%程度であると述べている。多くのビジネスでは、ボリュームゾーンをターゲットにして利益を上げることが大前提であるため、6番目の層の人々をターゲットにすることは、これまで考えられてこなかった。


しかし、これからはそうもいかなくなる。生まれたときからピラミッドの全階層が満たされている新世代が出現しています。また、物質的な価値よりも精神的な価値を求める層です。高級車やマンション、高級時計などの所有欲よりも、生まれたときから物質的な豊かさに恵まれているため、精神的な豊かさに価値を見出すのです。


そして、成長し、社会のリーダーとなった今、その欲求を満たすために、自然と第六層に足を運ぶのです。


休みを取って被災地でボランティア活動をするビジネスパーソン、恵まれない環境にある子どもたちのために活動する大学生、孤児院や児童館にタイガーマスクの寄付を投げ入れる匿名の人……。直接的な報酬ではなく、社会のためになる第6のレイヤーが育ってきているのです。

確実に成長している。この人たちの数を足すと、おそらく人口の2%にも満たないでしょう。マザー・テレサの仕事を身近でやっている人たちは、これからも増えていくでしょう。


例えば、ips細胞の研究でノーベル賞を受賞された京都大学の山中教授のように、私利私欲を超えて人類や仲間のためになる何らかの仕事や使命に取り組み、その目的を達成しようとする人は、確実に増えていくと思っています。


21世紀を生きる私たちは、マズローが加えた第6ステップの精神で仕事や学問を追求する人たちを応援することを仕事にしていきたいと考えています。

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