言語障害とは
言語障害は、発声発語器官(唇、顎、舌、鼻から喉、気管、気管支から肺までの声を出すための器官)のどこかに異常があり、言葉を正しく発音できない「構音障害」と、大脳言語野に異常があり言葉を使えない「失語症」に分類されます。
言語障害の症状
構音障害の症状としては、声が出ない、声は出るがはっきりと発音できない、特定の音(特にタ行とラ行、バ行とパ行)が出せない、舌打ちをする、会話や筆談ができない、などが挙げられます。通常、構音障害のみであれば筆談は可能であると考えられています。
失語症には、さまざまな症状があります。「話せない」「よく間違える」「スムーズに話せるが、状況に応じた言葉を選べない」「意味不明な言葉を話す」などの「話す」障害、「音は聞こえるが、何を言っているかわからない」などの「聞く」障害、「読み書きができない」「読めるが何を言っているかわからない」などの「読む・書く」障害、そして「読めるが何を言っているかわからない」「読む・書く」障害があるのです。
これらはすべて、失語症の症状として知られています。
高齢者の言語障害の原因としては、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称)、認知症などが挙げられます。また、発話の運動機能障害の原因としては、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患などがあります。
その他、音声機能障害の原因としては、難聴などの聴覚障害に伴うもの、発達障害や知的障害に伴うものなどがあります。
失語症について
脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍、外傷性脳損傷による障害には、手足だけでなく、言葉の障害も含まれます。そのひとつが失語症です。
失語症とは、「大脳の損傷により、一度獲得した言語機能が失われること」です。
私たちは日常的に言葉を使ってコミュニケーションをとっていますが、失語症になると「聞く」「話す」「読む」「書く」といった言語機能全般にさまざまな障害が生じます。
失語症は、「聞く」「話す」「読む」「書く」など、言語機能全般にさまざまな障害が生じます。
失語症のタイプ
前述したように、言語には4つの機能があり、それぞれ脳の異なる領域に集中しています。
そして、これらの個々の領域の障害の影響により、さまざまな失語症の症状が現れ、失語症の種類に分類されます。
ここでは、代表的な種類をご紹介します。
《ブローカ失語》
運動性失語症とも呼ばれ、言葉が流暢でなく、不明瞭であることが特徴です。相手の言っていることはある程度理解できるのですが、いざ話そうとするとなかなか言葉が出てきません。特に、言葉の最初の音が出にくいのが特徴です。
《ウェルニッケ失語》
感覚性失語症とも呼ばれ、流暢に簡単に話すことができるのに、他人の話す言葉を理解することができない失語症の一種である。
また、自分の言葉をよく理解できないまま話すので、まともな会話もできません。
例えば、「ご飯が食べたい」と言いたいときに「机が食べたい」と言ったり、「スベラギノコウサイ」など日本語にない言葉を発したりします。
《伝導失語》
このタイプの人は、相手の言っていることは理解できるのですが、話したり書いたりするときに、「リンゴ」が「クリンゴ」や「リンゲ」になるなど、発話の誤りをします。また、その間違いに気づき、正しい音を探して修正することもよくあります。
《全失語》
このタイプでは、すべての言語機能が著しく損なわれ、相手の話しをほとんど理解できず、まったく話さないか、意味のない一語を発するだけとなります。
言語障害の診断
言語障害を診断する際には、構音・プロソディー検査、会話明瞭度検査・構音器官の検査、標準失語症検査(SLTA)・老研版失語症検査・国立リハ版失語症選別検査・BDAE 失語症重症度評価尺度などの失語症の重症度を知るための検査を用い、以下の状況について確認を行い、所見を総合して、言語障害の分類および重症度の診断を行います。
構(発)音の状態
母音、子音等の正確性、発話全体としての会話明瞭度及び自然性(抑揚、アクセント、発話速度等)
構音器官の所見
口唇、舌、下顎、口蓋、咽頭等の運動機能と形態
言語理解力
音声言語に関して、単語や文の理解ができるか否か(聴覚的理解)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文等の視点から理解力の程度をみる。
言語表出力
単語や文が言えるか否か(音声言語の表出)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文、文の形式(構文又は文法)、文による具体的情報伝達(実質語の有無)等の観点から表出力の程度をみる
言語障害の治療
脳卒中や認知症に伴う言語障害は、特効薬や有効な治療法がないため、残念ながら元に戻すことが困難な場合が多くあります。
言語障害の主な治療法は、言語聴覚士によるリハビリテーションです。言語障害の症状や程度は人によって大きく異なるため、個々に合わせたリハビリテーションが必要です。
構音障害が主な原因の場合は、言葉をはっきり発音し、ゆっくり話す、言葉を区切って話すなど、相手が理解しやすいように練習します。
失語症が主な原因の場合は、残存機能を十分に活用し、実用的なコミュニケーション方法を確立するための訓練を行います。
言語障害の予防・ケア
認知症に基づく言語障害以外の言語障害は、単に状況に応じた言葉が出せないだけであり、理解力が低下しているわけではありません。
小さな子供に話しかけるような言葉遣いや身のこなしは、本人の自尊心を大きく傷つけ、リハビリテーションへの意欲を低下させることになります。
言語障害のある人に話しかけるときは、ゆっくりと平易な言葉で話し、相手が話すのを待ち、話すのが困難な場合は「はい」「いいえ」で答えられる質問を用意しておくとよいでしょう。
一番大切なのは、相手の気持ちに寄り添うことです。
思うように話せないことは、とてももどかしくイライラするものです。徐々にその人にとって可能なコミュニケーション手段を確立していきましょう。