看護師国家試験出題範囲 目標Ⅲ.看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復について基本的な知識を問う。の『大項目』中に「人体の構造と機能」があり、『中項目』には今回のタイトルである「人体の基本的な構造と正常な機能」があります。小項目として問われる内容は以下のとおりになります。
- 内部環境の恒常性
- 神経系
- 運動系
- 感覚器系
- 循環器系
- 血液、体液
- 免疫系
- 呼吸器系
- 消化器系
- 栄養と代謝系
- 泌尿器系
- 体温調節
- 内分泌系
- 性と生殖器系
- 妊娠・分娩・産褥の経過
- 遺伝
内部環境の恒常性
例えば、スキー場のゲレンデに長時間放置されたとします。体温は下がりますか?体に異常がない限り、体温は一定に保たれます。このように、体内のあらゆるものが一定の温度に保たれているのです。これをホメオスタシス(恒常性)といいます。
ホメオスタシスとは、血圧、心拍数、体液・水分量、電解質、血糖値など、体内のさまざまなパラメータを維持することです。これらは、ホルモンと自律神経系によって維持されています。自律神経系は即効性があるが持続時間が短いのに対し、ホルモンは遅効性があるが持続時間が長いことが特徴です。
神経系
神経系は、私たちの日常の動作や感覚をつかさどる非常に重要な部分である。人間の体は、(1)上皮組織、(2)結合組織、(3)筋肉、(4)神経の4つの組織で構成されています。つまり、神経組織は私たちの体の構成要素であるだけでなく、私たちの非常に重要な機能的に非常に重要な部分なのです。例えば、感覚にはいろいろな種類があります。例えば、痛み、熱さ、冷たさ、触覚、圧力、見る、聞く、嗅ぐ、味わうなど、感覚にはさまざまな種類があります。これらの情報はすべて、神経によって脳に伝わります。これらの情報はすべて、神経によって脳に伝えられ、脳はそれを「感じる」のです。では、神経系(神経組織)の構造を見てみましょう。
神経組織は、大きく分けて神経細胞と神経支持細胞に分けられます。 神経細胞の構造をみていきましょう。核を含む 「細胞体」、 細胞体から細い線維が伸びる 「樹状突起や軸索」、軸索の末端には神経終末という、他の神経細胞との連絡場所を持っています。 さらに、 軸索の周りには支持細胞の一種「シュワン細胞」 が取り囲み、 「髄鞘」 を作ります。 軸索末端のすぐ隣には他の神経細胞の樹状突起があり、 「シナプス」 と呼ばれる連絡口があります。
さて、先ほど神経は情報を脳に伝えるといいましたが、ここで神経の興奮伝導の仕組みをみていきましょう。
神経細胞は、ある刺激(光、におい、味、音、寒さなど)を受けると、電気的に興奮する。通常、神経細胞の内部はマイナスに帯電していますが(物体が帯電する現象)、興奮性の刺激が起こると、その部分だけがプラス(正電荷)に変化します。これを「活動電位」といい、いわゆる興奮状態である。この活動電位は、神経の長い軸索に沿って伝わり、神経終末に到達します(伝導)。次に、「神経伝達物質」と呼ばれる物質が神経末端から隣の神経細胞に落ち、隣の細胞で活動電位が発生する。これが「伝導」と呼ばれる現象です。そして、興奮した神経は、リレーのように次々と軸索末端に伝達されていく。「髄鞘」は「跳躍伝導」といって、 伝導スピードの飛躍的な促進に働きます。
さて、この神経細胞と神経支持細胞でできた神経組織ですが、大きく分けて「中枢神経」と「末梢神経」に分かれます。 中枢神経はさらに、脳 (大脳、小脳、 間脳、中脳、橋、延髄)と脊髄に分かれます (中脳・ 橋延髄をまとめて 「脳幹」と呼びます)。脳は、頭蓋骨の中に、脊髄は脊柱管内に収納されています。 つまり、 非常に重要な組織ということで、丈夫な骨によって守られているのです。 さらに、脳や脊髄は「髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)」と呼ばれる3層構造の膜に包まれ、 組織の保護に役立っています。
次に、末梢神経について説明します。これらは、脳神経と脊髄神経に分けられます。脳神経は頭蓋骨から、脊髄神経は脊柱から出るので、このような名前になっています。この命名法はややこしいのですが、「構造的」な側面に着目して分類しています。前者は皮膚や骨格筋に分布する神経を指し、後者は内臓や血管平滑筋、分泌腺に分布する神経を指します。
それでは、脳と脊髄の各部位の構造と機能を見ていきましょう。
大脳
- 脳の最も上方に位置し、左右の大脳半球より構成される
- 大脳の表面は「灰白質(大脳皮質)」となり、神経細胞体が集まっている。 内部は「白質」となり神経細胞の線維 (軸索や樹状突起)が集まっている
- 大脳の表面は、中心溝(ローランド溝)・外側溝(シルビウス溝) 頭頂後頭溝によって前頭葉 頭頂葉 側頭葉 後頭葉に分かれる
- 大脳の場所により、運動中枢、感覚中枢、 視覚中枢、 聴覚中枢、味覚中枢、言語中枢などがあり、 大脳の 「機能局在」 と呼ばれる
- 言語中枢は大脳の優位半球 (通常は左) の新皮質に2か所存在する。 1つは運動性言
- 語野 (ブローカ野) で、 前頭葉の運動野の近くにあり、 発語に必要な筋を支配。 もう1つは感覚性言語野 (ウェルニッケ野) で、 側頭葉の聴覚野の後方にあり、 言語の入力に関わる
- 大脳内部には数か所の灰白質 (尾状核被殻・淡蒼球など) があり、大脳基底核と呼ばれる
小腦
- 脳幹の後ろに位置し、 左右の小脳半球と中間の虫部より構成される
- 姿勢を保持するなどの運動調節の統合中枢や熟練の技の習得などに関与する
間腦
- 左右の大脳の間にあるということで間脳と呼ばれる
- 大きく視床下部と視床に分かれる
- 視床下部は自律神経の最高中枢、内分泌系の上位中枢として働く
- 視床下部には、摂食・満腹中枢、飲水調節中枢 (渇中枢)、 体温調節中枢、睡眠中枢性中枢などがある
- 視床下部のさらに下には下垂体がぶら下がり、内分泌系の下位中枢として働く
- 視床は嗅覚以外のすべての感覚情報の中継点となる
- 視床の上部には 「松果体」 があり、 メラトニンが分泌され日内リズムの維持に関わる
- 視床の尾側には、 内側膝状体と外側膝状体があり、それぞれ聴覚と視覚の中継点となる
脳幹
- 間脳の下方、 脊髄の上方に位置する
- 中脳・橋延髄より構成される
- 中脳内部には赤核・黒質があり運動調節に関わる(黒質の変性はパーキンソン病に関わる)
- 中脳には対光反射輻輳反射などの瞳孔反射中枢がある
- 中脳の背側には上丘・下丘という膨らみがあり、それぞれ視覚と聴覚に関わる
- 中脳は姿勢を反射的に調節する
- 意識や覚醒レベルに関与する部位 (網様体)がある
- 延髄には、唾液分泌・せき・くしゃみ・嘔吐嚥下・呼吸・循環中枢がある
脊髄
- 脊柱の中の脊柱管に保護されている
- 下端は腰椎の1番目から2番目の間で終わる
- 下端からは脊髄神経がぶら下がり、「馬尾」 を形成する
- 中央にH型をした灰白質と外側に白質がある
- 脊髄は運動神経が出て、 感覚神経が戻る場所である
- 白質は運動と感覚の情報が通る通路となる
脳と脊髄はそれぞれ重要な役割を担っています。特に、脳幹は循環と呼吸の中心であり、これらの部位が損傷すると命にかかわります。
次に、末梢神経の役割について説明します。脳からは12対の脳神経が、脊髄からは31対の脊髄神経があります。まず、脳神経の名称と役割についてまとめておきます。
脳神経
I : 嗅神経 →嗅覚情報を脳に伝える
Ⅱ : 視神経→視覚情報を脳に伝える
Ⅲ: 動眼神経→眼球の運動を司る外眼筋、レンズの厚さを調節する毛様体筋、瞳孔を収
縮させる瞳孔括約筋を支配
Ⅳ: 滑車神経→眼球の運動を司る外眼筋を支配
V: 三叉神経→顔面の知覚および咀嚼筋を支配
VI : 外転神経→眼球の運動を司る外眼筋を支配
VII:顔面神経→顔面の表情筋、唾液腺の顎下腺・舌下腺、涙腺を支配し、舌の前2/3の味覚を支配
Ⅷ: 内耳神経→聴覚情報と平衡覚情報を脳に伝える
Ⅸ:舌咽神経→舌の後半の感覚、 咽頭の運動と感覚、唾液腺の耳下腺、舌の後ろ1/3の味覚を担当
X: 迷走神経→舌咽神経とともに咽頭や喉頭の皮膚や筋を支配し嚥下に関わる。胸腹部内臓のほとんどの働きを支配
Ⅺ: 副神経→僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配
Ⅻ: 舌下神経→舌の運動を司る舌筋群を支配
脊髓神經
脊髄神経は31対の神経線維で構成されている。頚部神経が8対、胸部神経が12対、腰部神経が5対、仙骨神経が5対、尾骨神経が1対で構成されています。脊髄神経は脊髄から出ており、前枝と後枝に分かれています。前枝は側腹部、上肢、下肢の皮膚や筋肉に分布しています。後枝は、背中の皮膚や筋肉に分布しています。前枝は上枝、下枝と各所で絡み合い、「神経叢」を形成しています。そして、前枝は頸部、四肢、腹部などに分布しています。
つまり、脳神経の多くは首より上に分布し、脊髄神経は首より下で全身の皮膚や骨格筋に分布しているます。
最後に、自律神経について見ていきましょう。自律神経とは、私たちの体の自律神経機能を調節している神経系です。
交感神経と副交感神経に分けられます。この2つの神経は同時に働くのではなく、一方が働いてもう一方が休む、あるいはその逆のシーソーのような関係で働きます。これを「拮抗作用」といい、両神経の活動によって体に変化が起こります。具体的な神経支配の部位としては、内臓、分泌腺、血管平滑筋、末梢の化学受容器や圧受容器などがあります。
交感神経は、ストレスを感じているとき、戦っているとき、何かから逃げているときに優位に立つとよく例えられます。
交感神経は、ストレスを感じているとき、戦っているとき、何か怖いものから逃げているときに優位になります。一方、副交感神経は、リラックスしているときや休んでいるときに優位になります。
副交感神経と副交感神経は、次の臓器にどのように作用しているのでしょうか。
次の表にまとめました。
交感神経の影響 | 副交感神経の影響 | |
瞳孔 | 散大(拡張) | 縮瞳(収縮) |
唾液腺 | 粘性唾液分泌 | 漿液性唾液分泌 |
心拍数 | 増加 | 減少 |
末梢血管 | 収縮 | 支配なし |
気管支 | 拡張 | 収縮 |
胃腸運動 | 抑制 | 促進 |
排尿 | 抑制 | 促進 |
副腎髄質 | アドレナリン、ノルアドレナリン | 支配なし |
男性生殖器 | 射精 | 勃起 |
汗腺 | 分泌促進 | 支配なし |
立毛筋 | 収縮 | 支配なし |
自律神経は体性神経と異なり、神経節を経由します。神経節の中心側にある神経を「前神経節線維」、末梢側にある神経を「後神経節線維」と呼びます。それぞれの線維の末端と遠心から神経伝達物質が放出されるが、交感神経の節後線維だけがノルアドレナリン、その他はアセチルコリンを分泌するという違いがあります。(汗腺は交感神経系であるが、節後線維の伝達物質はアセチルコリンである)。
運動系
骨格は、私たちの体を支える土台です。意外なことに、骨格は約200個しかないそうです。骨には筋肉(骨格筋)がついていて、この筋肉が運動も行っています。つまり、骨と骨格筋が運動器官を構成しているのです。
体を支え、運動する以外に、骨にはどのような役割があるのでしょうか。臓器を保護したり、カルシウムを蓄えたり、血液を作ったり。頭蓋骨と脊柱は脳と脊髄を、肋骨は心臓と肺を守っているのです。さらに、体内のカルシウムの実に99%が骨に含まれているのです。まさにカルシウムの銀行なのです。
骨の内部は緻密質と海綿質に分けられ、前者は表層に、後者は深層にある。また、長骨(大腿骨など)の深部中央には髄腔と呼ばれる腔状の空間があります。髄腔と海綿体の間の空間には「骨髄」があり、ここに造血幹細胞が存在し、活発に造血機能を発揮しています。
これがいわゆる「赤色骨髄」である。しかし、この造血機能は加齢とともに変化します。
大腿骨や脛骨などの長骨では、造血機能が低下し、次第に脂肪組織に置き換わっていきます。これが「黄色骨髄(脂肪性骨髄)」です。大人になっても造血機能が保たれている骨は?胸骨、脊椎骨、腰骨、肋骨などの胴体の骨です。
次に重要なのが「関節」です。基本的に関節は、軟骨の端が向かい合った2つの骨からなり、骨の端は「関節包」という繊維状の結合組織で覆われています。関節包の中には滑液という液体が入っていて、関節に栄養を与え、関節を動かしやすくしています。関節の障害には、捻挫や脱臼などがあり、臨床上非常に重要です。
ここで、骨の分類と概要についておさらいしておきましょう。
骨は大きく体幹と四肢に分けられる。体幹は頭蓋、脊柱、胸郭からなり、四肢は上肢と下肢に分けられます。
それぞれのカテゴリーに登場する骨を見ていきましょう。
頭蓋
15種23個の骨からなり、縫合で連結されています。脳を保護しています。
脊柱
頸椎(7個の椎骨)、胸椎(12個の椎骨)、腰椎(5個の椎骨)、仙骨(5つの仙椎が1つに癒合) 尾骨 (3~5個の尾椎が癒合)からなり、中に脊柱管があり、 脊髄を収容しています。
胸椎と仙骨は後彎、 頸椎と腰椎は前彎といって、彎曲しており、これを「生理的彎曲」といいます。
胸郭
1つの胸骨、 12対の肋骨、 12個の胸椎からなり、肋骨は胸椎から出ています。
心臓や肺を保護しています。
上肢
上肢帯 (鎖骨 肩甲骨)と自由上肢骨 (上腕骨、橈骨(前腕の母指側)、尺骨(前腕の小指側) 手の骨)
下肢
下肢帯 (骨盤) 自由下肢骨(大腿骨、脛骨、 腓骨、足の骨)ここで、骨盤とは、寛骨、 尾骨、仙骨を合わせたものをいいます。
筋肉
一口に筋肉と言っても、大きく2つに分かれます。 1つは自分の意志で動かすことのできる随意筋、そしてもう1つは、 自分の意志では動かせない不随意筋とがあります。 随意筋の中には骨格筋、 不随意筋の中には平滑筋と心筋が含まれます。
次に、骨格筋の基本構造をみていきましょう。
骨格筋の両端は 「腱」 となって、 骨と結合しています。 結合している部分のうち、体幹に近い側を 「起始」 遠い側を 「停止」 といいます。 骨格筋が働くと収縮しますが、 この際、停止が起始に近づくことで、 筋の運動が起こります。 そして、 関節を曲げたり伸ばしたりできるのです。骨格筋の働きによって、 屈曲・伸展、 外転・内転、 外旋 内旋、回内 回外、挙上・下制などの動きができます。
では、主な関節における関与する骨格筋の名称をみていきましょう。
肩関節
球関節
外転: 三角筋
内転: 大胸筋、広背筋
肘関節
蝶番関節
屈曲 上腕二頭筋など
伸展: 上腕三頭筋
股関節
球関節
屈曲: 腸腰筋
伸展: 大殿筋
外転:中殿筋
内転 :内転筋群
膝関節
蝶番関節
屈曲: ハムストリングス (大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)
伸展: 大腿四頭筋 (大腿直筋、外側広筋 中間広筋、 内側広筋)
足関節
蝶番関節
背屈(足先が上がる動き) :前脛骨筋
底屈(足先が下がる動き) : 下腿三頭筋 (ヒラメ筋、腓腹筋)
骨折
骨折とは、骨の全体もしくは部分的に連続性が絶たれたものをいいます。
1. 外傷性骨折
骨折のほとんどは外傷によるものです。 正常な骨に外力が作用して完全もしくは部分
的に離断されたものです。
2. 病的骨折
骨粗鬆症や骨腫瘍などの基礎疾患があり骨組織が脆弱になっているときに、正常な骨であれば骨折が起こり得ないようなわずかな外力、 あるいは外力なしで発生するものをいいます。
3. 疲労骨折
普通では骨折を起こさない程度の小さな力でも、長距離走など骨の特定部位に繰り返
し連続的に負担が加わることで起こるものをいいます。
原因による分類以外にも皮膚の損傷の有無による分類があります。皮膚損傷を伴い、 外界と損傷部位が交通しているものを開放 (複雑) 骨折といいます。
感染の恐れがあるため6~8時間以内の処置が必要となります。
一方、外界と連絡のないものは閉鎖 (単純)骨折といいます。骨折の症状には、疼痛、腫脹、 皮下出血、変形、異常可動性、軋轢音(あつれき音) ショックなどがあります。
骨折の治療の3原則は、 ①整復、②固定、 ③リハビリテーションです。
また、ギプス固定後であっても、神経損傷に注意を払います。 特に下腿骨骨折の際の腓骨神経麻痺や、上腕骨顆上骨折などで生じやすいフォルクマン拘縮の予防は重要です。
*高齢者の骨折は治りにくく、寝たきりをつくる原因となっています。
高齢者に多い骨折には次のようなものがあります。
・上腕骨外科頸骨折(手掌をついて転倒した際に発生)
・橈骨遠位端骨折(手掌をついて転倒した際に発生)
・大腿骨頸部骨折(転倒後起立不能となる)
・腰椎圧迫骨折(尻もちをついたときなど、 腰椎が上下に圧迫された際に発生 )
感覚器系
人の体の内外からの刺激は、各種の受容器によって検知されます。 受容器によって検知される情報は感覚と呼ばれ、 感覚のための受容器を感覚器といいます。 いろいろな種類の感覚は、感覚器の存在する部位によって4群に分けられます。
1. 表在感覚
全身の皮膚や粘膜によって検知されます。 触覚、圧覚、冷覚、温覚、 痛覚が表在感覚で
す。
例: お風呂に入った際に、「温かい」と感じる。
2. 深部感覚
筋肉や関節などによって検知されます。 運動感覚、 位置感覚、 振動感覚が深部感覚です。
例:閉眼の状態でも肘が伸びているのか縮んでいるのか把握できる。
3. 特殊感覚
鼻眼・耳・舌によって取り込まれ、 頭部にだけ存在する特殊な感覚器によって検知されます。 嗅覚 視覚、聴覚、 平衡覚、味覚が特殊感覚です。
例: 信号機の何色が点滅しているか見て把握する。
4. 内臓感覚
内臓領域で感知されます。 内臓痛覚、臓器感覚が内臓感覚にあたります。
例:胃がむかむかする。
循環器系
生きていると、栄養素や酸素を使い、 代謝産物や老廃物、 二酸化炭素を排出します。 それらの物質を運搬するには、 身体の隅々まで血管が通っていないといけません。血管は、 そのための道です。
血液を動かす原動力は心臓のポンプ機能です。
心臓は4つの部屋、 つまり左右の心房と心室からなります。 血液の拍出に関わる心室は心房より壁が厚く、 また、 体循環に関わる左心室の壁は右心室より約3倍厚くなっています。
全身で酸素を消費し、二酸化炭素をたくさん積んだ血液 (静脈血)は右心房に戻ってきます。
静脈血は右心房から右心室に移動し、右心室から「肺動脈」を通じて肺に送り込まれます。 肺ではガス交換 (次項参照) が行われ、静脈血から動脈血(酸素をたっぷり含んだ血液) に変わります。
次に、肺でガス交換された動脈血は左心房に返り、左心室を経て大動脈に流れます。 大動脈は、動脈血を全身に運ぶ血管の大もとです。
そして全身の細胞は、 毛細血管を介して酸素と二酸化炭素の交換を行って静脈血に変化するという具合に、ぐるぐる巡ってきます。
循環とは心臓から肺に出向き、肺から心臓に戻る循環 (肺循環) と、 心臓から全身に出向き、 全身から心臓に戻る循環 (体循環)とに分けられます。
ここで注意してほしいのは、動脈は “血管” のことであって “血液” ではないということです。 動脈は心臓から送り出されて目的地に出向く血管です。
心臓の収縮によって血液が押し出されますので、 血管が拍動に合わせて動くから動脈といいます。 このことから、 肺動脈に静脈血が流れているという理由がお分かりいただけるでしょう。
・心臓から肺に “出向く” 血管→肺動脈 (静脈血)
・肺から心臓に “戻る” 血管→肺静脈 (動脈血)
・心臓から全身に“出向く” 血管 大動脈 (動脈血)
・全身から心臓に“戻る” 血管→大静脈 (静脈血)
次に、動脈血と静脈血では 「色」も異なります。 赤血球に含まれるヘモグロビンに酸素が結合すると (酸素化ヘモグロビン)、 鮮紅色になります。 一方、静脈血は酸素が離脱したヘモグロビン (還元ヘモグロビン) が多く、 暗赤色になります。 ちなみに、 「チアノーゼ」 とは血液中の酸素が減少し (還元ヘモグロビンの増加)、 皮膚や粘膜 (口唇や爪に現れやすい) が青紫色を帯びることをいいます。
血液、体液
皆さんご存知のように、人間の血液は赤い色をしています。
人間の場合、血液の色、つまり赤色は赤血球に含まれるヘモグロビンが担っています。ヘモグロビンは鉄分を含んでおり、酸素と結合して全身に酸素を運びます。ヒトの動脈血では、ヘモグロビンの大部分(97.5%)が酸素と結合して酸素化ヘモグロビンとなる。全ヘモグロビンに対する酸素化ヘモグロビンの比率を酸素飽和度といいます。そして静脈血は、細胞に酸素を与えた後に酸素を失った脱酸素ヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の割合が増加した血液です。
さて、血液は酸素を運ぶ以外にどのような働きをしているのでしょうか。まず、血液は大きく分けて、細胞成分である血球と、液体成分である血漿に分けられます。血液全体の体積のうち、血球成分が約45%、血漿成分が約55%を占めています。各成分の役割を見てみましょう。
血球には、赤血球、白血球、血小板があります。赤血球は酸素を運び、約120日の寿命の後、脾臓で破壊され、肝臓で胆汁成分の原料になります。白血球の寿命は種類によって異なり、例えば好中球は数日である。リンパ球の中には数ヶ月から数十年生存するものもあります。
白血球は、生体防御(異物の除去)を担う顆粒球、リンパ球、単球に分けられる。このうち、好中球と単球(最終的にはマクロファージになる)の最も重要な役割は、貪食(体内に侵入した物質を取り込み消化すること)である。そのため、細菌感染による急性炎症が起こると、好中球が最初に反応し、臨床検査で最も早い炎症マーカーとして利用されます。血小板は10日程度の寿命があり、血液凝固に関与して止血を担っています。
これらの「血球」成分は、骨髄(赤色骨髄)にある造血幹細胞に由来しています。造血幹細胞は「多能性幹細胞」とも呼ばれ、あらゆる種類の血球に変化する能力を持つ、まさに多能性を持った細胞です。
一方、「血漿」はそのほとんどが水(約90%)で構成されていますが、水にはさまざまな物質が含まれています。血漿の役割は、基本的に物質を運ぶことです。ブドウ糖、ビタミン、タンパク質、遊離脂肪酸、ホルモンなどの有用物質や、イオン(電解質)、炭酸ガス、重炭酸イオン、老廃物などを運んでいる。
血漿中の様々なタンパク質の中で最も重要なのは、アルブミン・グロブリンとフィブリノーゲンである。アルブミンとフィブリノゲンは肝臓で生産され、グロブリンの多くはリンパ球の一種であるBリンパ球で生産されます。アルブミンの最も重要な役割は、「膠質浸透圧」の維持です。その他、物質の運搬(車の荷台のようなもの)、それ自体が栄養素としての役割もある。特に重要なのがグロブリンで、免疫グロブリンとも呼ばれます。異物の攻撃に関与している。フィブリノゲンは凝固因子の一種なので、「凝固」、つまり血液を固めることに関与しています。
血漿からフィブリノゲンが除去されると血清になります。
血液の役割としてもう一つ忘れてはならないのが、熱の運搬です。体幹や筋肉で作られた熱は、体幹から四肢に運ばれて熱の配分が行われます。
ところで、1単位(マイクロリットル)あたり何個の血球があるかご存じでしょうか。
男性の赤血球は約500万個、女性は約450万個です。男女とも約450万~500万個と覚えておきましょう。白血球は赤血球よりずっと小さく、4,000~9,000個あります。最後に、血小板は巨核球という巨大な細胞が断片化したもので、その数は約25万個。つまり、血液中のほとんどの細胞は赤血球なのです。血液中の赤血球の割合をヘマトクリット値と呼びます。ヘマトクリット値の正常値は、成人女性で36~42%、成人男性で40~48%です。
体液は成人では体重の60%を占め、そのうち40%が細胞内液、20%が細胞外液である。新生児の体液量は体重の80%(細胞外液が多い)、老年期には50%程度(細胞内液が少ない)と年齢とともに減少する。
最後に電解質ですが、 「電解質」とは、水に溶けると電荷 (プラスやマイナス)をもつ化学物質のことをいいます。 塩化ナトリウム (つまり塩)は水に溶けると、 ナトリウムイオン(Na)と塩素イオン 塩化物イオンまたはクロール C1 ⁻) に分かれますよね。これが電解質です。 ヒトの体内にはさまざまな電解質が存在し、体液の浸透圧やpHを調節するなど、重要な機能を果たしています。 細胞内液にはカリウ(K+) が多く、細胞外液はナトリウム (Na+)とクロール (C1⁻ ) の濃度が高くなっています。
点滴静脈内注射の際などに用いる生理食塩水は、体液のナトリウム濃度の0.9%に合わせて作られたものです。 また、 輸液に用いられるブドウ糖溶液も、 通常私たちの血漿浸透圧濃度と同じ 5%です。 このように体液と等しい浸透圧の溶液を等張液といいます。
免疫系
私たちの周りには、さまざまな病原体が存在します。例えば、細菌、ウイルス、カビ、などの真菌です。これらは、顕微鏡(場合によっては電子顕微鏡)を使わないと見ることができません。そのため、これらの病原体に注意することがいかに重要であるか、私たちは気づいていないのではないでしょうか。
私たちの体には、これらの病原体を攻撃したり、ガードしたりする仕組みが備わっています。これを “免疫力”あるいは “抵抗力 “と呼びます。”免疫 “とは、病気から “逃れる”、”免れる “という意味です。
免疫は、大きく「自然免疫(非特異的免疫)」と「獲得免疫(特異的免疫)」に分けられる。前者は生まれながらにして持っている免疫で、後者は生後に遭遇する(感染する)病原体に対する抵抗力を獲得することで獲得する免疫である。一度かかった病気は二度とかからない」と言われるのは、この後天性免疫のおかげです。
さて、自然免疫とはどのようなものでしょうか。例えば、「皮膚」の表面は層状扁平上皮で、バリアの役割を果たすだけでなく、皮膚内の腺から分泌される脂肪酸や乳酸によって弱酸性になっています。そのため、細菌の繁殖を抑制する環境を作り出している。また、皮膚の表面は常在菌で覆われており、外部からの侵入者(病原体)を撃退しています。さらに、呼吸器を構成する上皮細胞には毛があり、ほこりや汚れの侵入を防いでいる。尿路における尿の流れも、尿道から上ってきた病原体を排除することに役立つし、膣内はデーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸桿菌が産生する乳酸が酸性の環境を作り、 菌体の増殖を抑えます。 その他、 貪食細胞と呼ばれる細胞達が、 皮膚や粘膜から侵入した病原体を食べて、処理してくれます。 さらに、私たちの細胞がウイルスに感染したり、がん細胞に変化したりすると、NK(ナチュラルキラー)細胞がその怪しい細胞を丸ごと退治してくれるのです。一見すると恐ろしい細胞ですが、私たちの体の細胞は日常的に病原体に侵されているため、重要なメカニズムなのです。
一方、獲得免疫とは何でしょうか。私たちの体の中には、抗体と呼ばれる免疫物質が存在します。抗体は全部で5種類あります。IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類です。抗体は病原体の表面にくっついて、その毒性を消す働きをします。
抗体の種類
免疫グロブリン (Ig)イムノ(免疫) グロブリンの略
IgG・・・ 最も多く、胎盤を通過できる ←胎盤をGo!
IgM・・・反応が速いので最も初期段階で発生する ←真 (Ma) っ先に分子量は最も高い (大きい)
IgA … 母乳など分泌液中に多く含まれ管腔内を守る ←母から子へ最初のA
IgE・・・アレルギーの原因となる ←アレルギ (E)
(特にI型アレルギーに関与)
免疫細胞から分泌されるサイトカインは、免疫細胞の活動の強さを調節しています。サイトカインには、インターロイキン、インターフェロン、TNF-α、その他多くのものがあります。
獲得免疫に関わる重要な細胞には、マクロファージ、T細胞(Tリンパ球)、B細胞(Bリンパ球)などがあります。新しい病原体が体内に侵入すると、まず好中球やマクロファージによって貪食されます。そして、細胞内でバラバラに分解され、その一部がマクロファージの細胞表面の触角に乗せられる(抗原提示と呼ぶ)。次に、Tリンパ球の中のヘルパーT細胞が病原体の一部を認識します。
そして、ヘルパーT細胞は「Th1」細胞、「Th2」細胞と呼ばれる細胞に変化する。前者はインターロイキン1やインターフェロンを分泌し、攻撃側のTリンパ球であるキラーT細胞を活性化させます。この細胞の働きを細胞性免疫といいます。一方、後者の「Th2細胞」は、Bリンパ球を活性化させ、プラズマ細胞に変化します。このプラズマ細胞は抗体を分泌し、侵入してきた病原体を攻撃します。この細胞機能を液性免疫といいます。
獲得免疫は、病原体が体内に入ってから時間がかかるため、それまで炎症によるさまざまな症状が現れることがあります。
抗原を提示されたヘルパーT細胞や一部のB細胞は、病原体の出現を記憶して、体内で生存し続けることがある。つまり、同じ病原体が体内に入ってきたときに、すぐに攻撃を開始できるようにスタンバイしているのです。このような仕組みがある場合を生涯免疫といいます。
ところが、病原体を攻撃する免疫システムが、あるとき自分の体の一部を攻撃して、さまざまな問題を引き起こすことがあります。この仕組みを「アレルギー」と呼び、I型からIV型(時にはV型)に分類されます。重症の場合は、自己免疫疾患を起こすこともあります。例えば、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎などです。
なお、抗原提示を受けたヘルパーT細胞と一部のB細胞は、病原体の姿形を記憶し、体内に生存し続ける場合があります。 つまり、 同じ病原体が進入してきたときには、すぐに攻撃を開始するようスタンバイしています。 このシステムができる場合を終生免疫といいます。
ところが、病原体に対して攻撃を行う免疫系が何らかの機構により、私たち自身の体の一部に対して攻撃を加え、 それがもとでさまざまな不具合を生じることがあります。 このメカニズムは 「アレルギー」と呼ばれ、I型からⅣV型(場合によってはV型) まで分類されています。ひどい場合は自己免疫疾患に陥ってしまいます。 重症筋無力症、 全身性エリテマトーデス、 アトピー性皮膚炎などがその一種です。
呼吸器系
呼吸とは、酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することです。鼻腔に入った空気は、喉頭に入ります。鼻腔から喉頭にかけての部分を上気道といいます。喉頭には、甲状軟骨と声帯があります。喉頭からは、気管と気管支が肺に通じています。気管と気管支は下気道と呼ばれています。
空気中には、ほこりや汚れ、場合によっては細菌やウイルスなどが含まれています。気道はこれらの異物の通り道であるため、異物に対する防御システムが備わっています。気道の表面(気道上皮)は、上皮細胞に毛が生えた「多列線毛上皮」になっています。
気道の表面は、杯細胞から分泌される粘液で潤っています。異物が侵入すると、粘液によって捕捉されます。線毛の働きで粘液が口の方へ、つまり喉頭から咽頭へ押し出されます。これにより、異物は咽頭へ送られ、痰として排出されるか、ある程度固まっても気づかれずに飲み込まれています。
気管支は葉気管支から区域気管支へと何度か分岐し、最後に「肺胞」へと至ります。肺胞はブドウの房のような形をしており、その周囲を毛細血管が取り囲んでいます。循環器の項で述べたように、肺動脈(静脈血)は肺に入り、肺胞の周りに毛細血管として存在します。毛細血管の壁と肺胞の壁は、非常に薄い構造でできています。
つまり、「肺動脈内の静脈血(低酸素、高二酸化炭素)」と「肺胞内の新鮮な空気(高酸素、低二酸化炭素)」は近接しているのです。
気体は、濃度の高いところから低いところへ移動する性質があります。これを拡散現象といいます。酸素は血液中(肺動脈)へ、二酸化炭素は肺胞側へ移動します。これが「ガス交換」と呼ばれる現象です。このように、外気を取り込んで肺胞と血管の間でガス交換を行う仕組みを「外呼吸」といいます。一方、酸素を多く含む動脈血は、全身の細胞に運ばれ、細胞集団に酸素を供給し、二酸化炭素(細胞の活動による老廃物)を受け取ります。このような体内の呼吸を「内呼吸」といいます。
呼吸は、肺が勝手に伸縮するのではなく、横隔膜や肋間筋などの「呼吸筋」によって行われています。横隔膜は、肺の下面を覆うようにドームのように伸びています。これが収縮する(ドームが下がる)と、胸(胸腔)内の圧力が下がり(陰圧)、空気を吸い込もうとする力が発生する。この力が空気を吸い込む原動力(肺活量)となり、肺が膨らんで空気が入るようになります。
一方、肋間筋は肋骨を挙上させることに関与しています。吸気時に肋骨を挙上させることで、胸郭を広げ、呼吸のためのスペースを確保します。
次に、空気が肺から出る仕組みを見てみましょう。肺には弾性収縮性という性質があり、外力がないときは収縮します。横隔膜や肋間筋が緩むと、肺も収縮しようとし、空気が外側(鼻の方)へ移動します。横隔膜が主に働く呼吸を「腹式呼吸」、肋間筋が主に働く呼吸を「胸式呼吸」と呼びます。本来はどちらも使って呼吸しますが、妊婦さんは横隔膜を下げることが難しいため、「肩で呼吸する」、つまり胸式呼吸がメインになります。
脳幹は、延髄、橋、中脳に分かれています。これらの「中枢」は、外部からの情報を受け取り、指示を出します。外部からの情報とは、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度、pHなどです。これらの情報は迷走神経や舌咽神経などの副交感神経によって伝えられ、横隔膜神経や肋間神経など呼吸筋の運動に関わる神経に指示を出し、呼吸運動を調節しています。
以上のように、呼気、吸気、 ガス交換、呼吸調節によって、 体内の環境を一定に保つ働きをしています。
成人の一般的な1回換気量は、約500mL。肺活量は、 男性 3~4L、女性2~3Lとなります。
消化器系
今、あなたが食事を摂っているとします。その食事をガツガツと食べると、その瞬間に「栄養を体内に取り込んだ」と思いませんか?
実は、そうではないのです。食べ物を飲み込んだだけでは、食べ物が体内に入ったことにはならず、まだ体の「外」にあるのです。
栄養が体内に吸収されるためには、細かく分解され(消化)、お腹の中を循環している血管やリンパ管に移動(吸収)される必要があるのです。
吸収されなかった食べ物はどうなるのでしょうか?
肛門から出る運命にある。食べ物はすぐに肛門から排出されるのではなく、時間をかけてゆっくりと腸内を移動し、必要なものは吸収され、不要なもの、吸収されなかったものは肛門に向かって移動し「便」として排泄されるのです。
もうお気づきだと思いますが、口は肛門とつながっています。
口から肛門までの器官を「消化管」と呼び、消化液や消化酵素を分泌する肝臓、胆嚢、膵臓を合わせて「消化器」と呼んでいます。では、消化器の外観を見てみましょう。ちなみに、消化器官は口から始まっています。
口腔→咽頭→食道 胃→十二指腸→空腸 回腸→回腸盲腸移行部→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸→肛門という順番で進みます。途中、十二指腸へは肝臓と膵臓由来の消化液などが注がれる管があり、その合流部を「大十二指腸乳頭(ファーター乳頭ともいう)」といいます。 これらすべてをまとめて 「消化器」 となります。
栄養と代謝系
栄養
主に栄養素に着目すると、米の主成分は唾液や膵液によって二糖類に分解され、さらに小腸で単糖類に分解されます。
最後にこの単糖類は小腸の上皮細胞で吸収され、血管に運ばれ、門脈として肝臓に運ばれる。
大豆や魚、肉の主成分であるタンパク質は、胃液で大まかに分解され(ポリペプチド)、膵液で2〜3個のペプチド(アミノ酸結合)になり、腸液でアミノ酸1個レベルにまで分解されます。
これが最終的に血管に運ばれ、肝臓に運ばれます。
次に脂質ですが、これは少し複雑です。脂質は胆汁と混ざって「ミセル」という小さな脂肪滴になり、リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解され、効率よく消化されます。
サイズが大きいため、血管には取り込まれず、リンパ管に取り込まれる。
そして、脂肪滴は腸のリンパ本管から腹部の胸管に運ばれ、最終的に静脈に合流する際に細かく分解される。こうして、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素が「吸収」されます。
こうして初めて、三大栄養素が体内に取り込まれたと言えるのです。胃液は胃酸とも呼ばれ、pH=1〜2の強酸性で、消化機能だけでなく殺菌にも重要な役割を担っています。強い酸性のため、病原微生物は容易に繁殖することができません。
肝臓、胆嚢、膵臓の役割について詳しく見ていきましょう。
肝臓は、胆汁というコレステロールを含んだ消化液を合成しています。この胆汁は胆嚢に運ばれ、そこで濃縮される。つまり、胆嚢は胆汁を貯蔵する臓器である。また、肝臓は吸収した栄養を利用して物質を代謝する。脂質の代謝、アルブミンの合成、グリコーゲンの合成と分解、体内の薬物、アルコール、アンモニアの分解などを行っています。また、血液凝固因子の合成も担っており、まさに万能な臓器です。
また、膵臓は非常に働き者の臓器です。膵臓は外分泌部と内分泌部があり、前者は消化酵素(トリブシン、リパーゼなど)や胃酸を中和する重炭酸イオンを生成しています。後者は、グルカゴン、インスリン、ソマトスタチンなどのいわゆるホルモンを合成し、ランゲルハンス島(膵島)と呼ばれる細胞群から分泌しているところです。グルカゴンとインスリンは、血糖値の維持に非常に重要な役割を担っています。血糖値が下がるとグルカゴンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解して血液中にグルコースを放出します。
一方、血糖値が上がるとインスリンが分泌され、肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、ブドウ糖の生成を抑制することで血糖値を下げることができます。ちなみに、血糖値を下げる因子はインスリンだけで、これは進化の過程でヒトが血糖値を下げる必要がほとんどなかったからかもしれない。血糖値を上げる因子としては、アドレナリン、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンに由来する糖質コルチコイドなどがある。
口腔
消化液:唾液
消化酵素: 炭水化物分解酵素 のプチアリン (唾液アミラーゼ) がデンプンを麦芽糖 (マルトース) に分解する。
胃
消化液: 胃液
消化酵素 : タンパク質分解酵素のペプシン(ペプシノゲンとして分泌され、胃液の酸によりペプシンとなる) がタンパク質をポリペプチド (アミノ酸数個からなる) に分解する
腸 ( 小腸)
消化液: 腸液
消化酵素: タンパク質分解酵素のペプチダーゼがペプトンをアミノ酸に分解する。
炭水化物分解酵素:マルターゼは麦芽糖 (マルトース) を分解する。
(ブドウ糖(グルコース)+ブドウ糖)
スクラーゼはショ糖 (スクロース) を分解する。
(果糖 (フルクトース)+ブドウ糖)
ラクターゼは乳 糖 (ラクトース) を分解する。
(ガラクトース+ブドウ糖)
睟臓
消化液: 膵液
消化酵素 炭水化物分解酵素 の膵液アミラーゼがデンプンを麦芽糖 (マルトース)に分解する。
タンパク質分解酵素のトリプシンキモトリプシン(トリプシノーゲン・キモトリプシノーゲンとして分泌され、 小腸内でキモトリプシンとなる)がタンパク質やペプトンをアミノ酸に分解する。
脂肪分解酵素のリパーゼが、脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解する。
(胃液や腸液にも含まれるが作用はほとんどみられない)
肝臓
胆汁をつくる。つくられた胆汁は胆嚢に蓄えられる。膵液とともに十二指腸に分泌される。 リパーゼの働きを助け、 脂肪の消化を助ける (乳化作用)。
肝機能のまとめ
① 尿素合成・・・ アンモニア+CO2= 尿素+水 (オルニチン回路)
②解毒作用・・・ 薬剤の最終的な代謝、アルコールの分解、有害物質の無毒化
③ 胆汁生成・・・ 脂肪の分解吸収を助ける (乳化作用)
赤血球分解で生じたビリルビンの排泄。
④物質の分解・貯蔵・・・ 赤血球の破壊、鉄の貯蔵、ビタミンの貯蔵古くなった赤血球 (寿命120日) は脾臓、肝臓のマクロファージ (クッパー細胞)によって破壊。
⑤代謝・・・栄養素の化学変化に関わる。
i. 糖質代謝・グリコーゲンの合成・貯蔵・分解
Ⅱ. タンパク質代謝・・・ 血漿タンパク質の合成、ビタミンKからのプロトロンビンの合成、胎生期の造血など
Ⅲ.脂質代謝…コレステロール、 中性脂肪を合成・貯蔵
iv. ホルモン代謝・・・エストロゲン、バソプレシンなどの不活化
代謝系
代謝とは、物質の分解と合成を指す言葉です。難しい言葉で言うと、物質を合成することを「同化」といい、エネルギーを消費します。一方、物質を分解することを「異化」といい、エネルギーを発生させます。人間の体内のエネルギーはATPという、生きていく上で重要な物質です。
ちなみに、エネルギー源は炭水化物、タンパク質、脂肪です。炭水化物1gとタンパク質1gを代謝するとそれぞれ約4kcal(キロカロリー)、脂肪1gを代謝すると約9kcalのエネルギーが発生します。つまり、脂肪は皮下脂肪として蓄積されるのです。
消化器系の項で、デンプンなどの炭水化物が単糖類に分解されることを説明しました。
例えばブドウ糖のような単糖を分解する過程では、細胞内に解糖系、クエン酸回路、電子伝達系というエネルギー生成工場が存在します。この工場を通じて、1分子のグルコースから約38個のATPが生産される。脂質に含まれる脂肪酸も、細胞内の「β酸化」経路を経て、グルコースよりも多くのATPを産生します。タンパク質がアミノ酸に分解されると、”糖新生 “というプロセスでグルコースが生成されます。このように、三大栄養素は私たちの体が生きていくためのエネルギー源として重要な役割を担っているのです。
泌尿器系
エネルギーを得たり、体の構成要素を作ったりと、体内では多くの化学反応が起こっています。
しかし、どうしても避けられない問題があります。それは、化学反応による老廃物です。アンモニア、クレアチニン、尿素、尿酸などの物質は、代謝産物とも呼ばれ、いわゆる老廃物です。
これらが体内に蓄積されると、問題が発生します。つまり、腎臓や泌尿器は、これらの老廃物や、余分なビタミン、水分、電解質などを排泄しているのです。
腎臓や泌尿器は、体内環境を一定に保つ「ホメオスタシス」と呼ばれる働きに非常に重要な役割を担っているのです。泌尿器系は、腎臓、尿管、膀胱、尿道から構成されています。ここでは、腎臓の構造と働きについて見ていきます。
腎臓は左右に1つずつあるソラマメ型の臓器です。
肝臓の下にある後腹膜臓器(腹膜の奥にある臓器)です。腎臓の中央には、腎動脈、腎静脈、尿管の3本の管があり、腎門から出入りしています。腎臓の内部は、大きく皮質と髄質に分かれています。
皮質側には腎小体があり、髄質側には尿細管と集合管があります。腎小体はマルピーギア小体とも呼ばれ、血液を濾過するところです。尿細管は、近位尿細管、ヘンレ環、遠位尿細管に細分化され、集合管につながります。
ここで、腎臓でどのように尿が作られるかを見てみましょう。腎動脈は腎臓に入ると枝分かれし、やがて「輸入細動脈」となって糸球体(糸くずの絡まったもの)を形成します。
糸球体は、ボーマン嚢という袋に囲まれています。ここで血液の液体成分が濾過され、ボーマン嚢から腎尿細管へと流れ込む。このろ過された液体を原尿といい、1日にろ過される量は約160リットルです。
しかし、このろ過された成分には、アミノ酸、ブドウ糖、ビタミン、水分などの有用物質も含まれています。さらに、かなりの量の水も濾過されます。
そして、尿細管上皮細胞は、再利用可能な水と有用物質を取り込み、尿細管の周囲の血管に運びます。この過程を「再吸収」といい、ブドウ糖、アミノ酸、水溶性ビタミンなどはほぼ100%再吸収されます。
酸、薬物代謝物、尿素などの特定の物質は、尿細管上皮細胞から直接尿細管に排泄されます。
この機構を分泌という。つまり、腎臓では、ろ過、再吸収、分泌の3つが尿を作る重要な要素となっているのです。最後に、成人の膀胱容量は約500mLで、1日に排泄される尿の量は約1,500mLと言われています。
つまり、原尿の約99%が再吸収されていることになります。
では、腎臓を出た尿はどのような経路をたどるのだろうか。
尿管を通り、膀胱に貯まる。膀胱に数百ミリリットルの尿がたまると、「尿意」を感じ、排泄信号が発生する。条件が整うと、膀胱の下部にある尿道括約筋が緩み、尿が尿道から流れて体外に排泄されます。
腎臓は尿の生成のほかに、血圧上昇に関係するレニンや、赤血球生成に関係するエリスロポエチンを分泌しています。さらに、ビタミンDを活性化し、カルシウムイオンの調節に関与しています。
腎機能を評価する検査としては、次のようなものに注意する必要があります。
項目 | 基準値 |
腎血流量(RBF) | 1100ml/分 |
腎血漿流量(RPF) | 900ml/分 |
糸球体濾過値(GFR) | 100ml/分 |
血中クレアチニン(Cr) | 0.5~1.1㎎/dl |
血中尿素窒素(BUN) | 8~20㎎/dl |
クレアチニンクリアランス(Ccr) | 70~130ml/分 |
Fishberg濃縮試験 | 3回中1回は 尿浸透圧850mOsm/kg・H²O以上 |
体温調節
哺乳類の一種である人間 (ヒト)は、常時体温が37℃前後に保たれています。 ヒトの体内では、熱(体温)を産生する機構と熱を放散する機構が存在し、両者の強弱によって、体温が一定に保たれるのです。 ところで、 どうして熱を一定に保つ必要があるのでしょうか。
哺乳類の一種であるヒトは、常に37℃前後の体温を保っています。人間の体には、熱(体温)を作り出す仕組みと、熱を放出する仕組みがあり、この2つの仕組みの強弱で体温を一定に保っているのです。なぜ、体温を一定に保つ必要があるのでしょうか?
それは、体内で起こる化学反応に必要な酵素のほとんどが最も働きやすい温度(至適温度)がちょうど37℃前後だからなのです。
熱は代謝活動、つまり物質の合成・分解の際に生じます。 生命の維持に最小限必要な代謝を「基礎代謝」といい、体表面積当たりに産生される熱量 (kcal) は男女とも2歳児で最も高く、加齢とともに低下します。
これは、体内で化学反応が起こるために必要な多くの酵素が最もよく働く温度(至適温度)が、ちょうど37℃前後であるためです。
熱は、代謝活動、つまり物質の合成や分解を行う際に発生します。生命維持に必要な最低限の代謝を「基礎代謝」といい、体表面積あたりの熱量(kcal)は男女とも2歳児が最も高く、年齢とともに減少する。
また、 熱産生は主に骨格筋や肝臓で行われます。 身体を動かす際には骨格筋による熱産生が増え、 食事のあとは、さまざまな化学反応が行われる肝臓での熱産生が増えていきます。
熱の産生は、主に骨格筋と肝臓で行われます。骨格筋での熱産生は運動時に増加し、肝臓での熱産生は食後に様々な化学反応により増加します。
体温は、腋窩温、口腔温、 直腸温の順に高くなり、 午前6時頃が最も低く、午後2~8時頃最も高くなります。 また、 朝起きた直後の体温は「基礎体温」 といい、 成熟期の女性は性周期によって基礎体温が変化します。
体温は腋窩温、口腔温、直腸温の順に上昇し、午前6時頃が最も低く、午後2時~8時頃が最も高くなる。朝起きてすぐの体温を「基礎体温」といいます。
では次に、基礎代謝に上乗せされる熱の産生、 熱の放散の仕組みをみていきましょう。
次に、基礎代謝に加わる熱生産と熱放散のメカニズムについて見ていきましょう。
熱產生
筋肉運動(身体活動) … 骨格筋による熱産生で、激しい運動の際には通常の2倍近くになります。
・ホルモンの影響 …甲状腺ホルモンやアドレナリンの影響によって代謝が亢進されます。
・特異動的作用 …食事を摂ると代謝が亢進することにより熱が産生されます。
熱放散
・伝導・・・熱は皮膚や粘膜から体表面の空気や物体に伝わります(伝導)。これは、皮膚の中の温かい血液から、冷たい空気や物に熱が奪われるからです。入浴後、顔や手足が火照るのは、温まった体を冷やすために皮膚表面の血管が拡張するためです。一方、外気温が低いときは、体温の変動による損失を減らすために血管を収縮させます(皮膚が白っぽくなる)。
・対流・・・肌に触れている空気が体表で温められると、その空気は上昇し、体表で再び冷たい空気と入れ替わることを対流といいます。風が吹くと涼しく感じるのは、対流が促進されるからです。一方、衣服は皮膚と衣服の間に厚い空気の層を作り、対流を遮断して暖かく感じさせるため、保温効果があるのです。
・蒸発・・・水分の蒸発は、皮膚(発汗)と呼吸器(呼気)を通じて行われます。このとき、皮膚からは気化熱(液体から気体に変化するのに必要な熱)が奪われる。これを「不感蒸発」といいます。
・発汗…伝導、対流、不感蒸泄による熱放散では熱のバランスが維持できないときに起こります。
これらの熱生産と熱放散の機能は、脳の視床下部にある「体温調節中枢」によって調節されています。皮膚や粘膜から感知した情報がこの中枢に伝わり、自律神経系や内分泌系を活性化させて体温を維持すします。
内分泌系
内分泌とは、”内側 “への “分泌 “を意味します。内側とはどこでしょうか?実は、内側とは血管の内側という意味なのです。
私たちの体には、体の外側(涙腺、汗腺など)や内側(消化管など)に分泌する「外分泌腺」と、血管の内側に分泌する「内分泌腺」が存在します。後者のうち、分泌される物質を「ホルモン」と呼びます。
ホルモンは、血流に乗って遠くまで運ばれることもあります。つまり、内分泌系は、ホルモンを分泌する臓器から、それを受け取る臓器への伝達手段なのです。
内分泌系を知る上で重要なことは、(1)ホルモンの名前(2)ホルモンを合成・分泌する器官(3)受け取る(標的)器官(4)ホルモンの役割(5)ブレーキ機構です。
具体的なホルモンを見てみましょう。
視床下部ホルモン
視床下部 (上位中枢) から分泌されるホルモンは、すべてそのすぐ下にある下垂体前葉
に作用します。その結果、下垂体前葉から多くのホルモンが分泌されます。
1. 視床下部
・副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH)
・甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH)
・成長ホルモン放出ホルモン (GRH)
・成長ホルモン抑制ホルモン (ソマトスタチン)
・プロラクチン抑制ホルモン (ドパミン)
・性腺刺激ホルモン放出ホルモン (GnRH、 LH-RH)
下垂体ホルモン
下垂体は前葉と後葉に分かれています。
2. 下垂体前葉
・成長ホルモン (GH)
骨や筋に作用し、成長を促します。 また、 肝臓を刺激し、 ソマトメジンを分泌させます。
このホルモンも骨や筋の成長に関与します。
・副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)
副腎皮質を刺激し、 糖質コルチコイドや電解質コルチコイド、 男性ホルモンの分泌を促します。 ストレスや低血糖によって分泌されます。
・甲状腺刺激ホルモン(TSH)
甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモン (T3 T4)を分泌させます。
構造と機能
・性腺刺激ホルモン(GnTH)
ゴナドトロピンとも呼ばれ、 卵胞刺激ホルモン(FSH) と黄体形成ホルモン(LH) の2つがあります。女性では卵胞の成熟や排卵誘発、黄体の形成に関与し、男性では精子形成、テストステロンの分泌に関与します。
・プロラクチン (PRL)
乳汁の合成や乳腺の発達に関与します。
3. 下垂体後葉
・オキシトシン (OXT)
分娩時の子宮筋 (平滑筋) 収縮作用や、 射乳反射に関与します。
・バソプレシン (ADH)
腎臓の集合管における水の再吸収(血管へ移動)を促し、尿量を減少させるとともに、血圧を上昇させます。
4. 甲状腺
甲状腺は、下垂体前葉からTSHを受け取ると、2種類の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン[T3]とサイロキシン[T4])を分泌し、基礎代謝を高める。
T3とT4は主にヨウ素で構成されています。検査前にヨウ素の多い食事を摂ると、甲状腺の機能が正しく測定できないため、ヨウ素も制限されます。
また、カルシトニンというホルモンが分泌され、血液中のカルシウムイオンを骨に移動させ、骨の形成に関与しています。
5. 副甲状腺
甲状腺のすぐ後ろにある米粒4つ分の大きさの組織です。
この部分から「パラトルモン」(PTH)が分泌されます。このホルモンは、カルシトニンと逆の作用で、骨組織を溶かし(骨吸収)、血液中のカルシウムイオンの濃度を高める働きがあります。
6. 膵臓
膵臓のランゲルハンス島 (膵島)には、3種類の細胞が存在しています。 つまり、A細胞(α) B細胞 (β) D細胞 (ô) です。 それぞれ、 グルカゴン (血糖値を上げる)、 インスリン (血糖値を下げる)、ソマトスタチン (A細胞とB細胞の調節) が分泌されます。
7. 副腎皮質
・糖質コルチコイド (コルチゾルが代表)
糖新生を促し、免疫抑制作用、ストレスに対応するなどの作用があります。
・電解質コルチコイド (アルドステロンが代表)
腎尿細管において、 ナトリウムイオンの再吸収を促進させます。 結果的に、水の再吸収
を誘発し、循環血漿量を増加させるので、血圧上昇作用があります。
・性ホルモン (DHEA : デヒドロエピアンドロステロン)
デヒドロエピアンドロステロンはアンドロゲンとエストロゲンに変換される。
8. 副腎髄質
ここは交感神経の信号が来ると、 アドレナリンやノルアドレナリンを分泌し、血糖値上昇作用、血圧上昇作用、 気管支拡張作用など、さまざまな反応があらわれます。
9. 腎臓
・レニン
血圧低下時に分泌されます。 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系に作用することによって、血圧を上昇させます。
・エリスロポエチン
赤血球の造血因子であり、 低酸素状態により分泌が促進されます。
10. 性腺
卵巣
・卵胞ホルモン(エストロゲン)・・・排卵 女性の第二次性徴に関与。
・黄体ホルモン(プロゲステロン) ・・・排卵抑制、 基礎体温上昇作用。
精巣
・男性ホルモンであるテストステロンが分泌され、 男性の第二次性徴に関与。
性と生殖器系
1. 男性生殖器
精巣(睾丸) (かたくて丸い形をしているので睾丸とも呼ばれます)
・精子が減数分裂によって盛んにつくられています。
・男性ホルモンのアンドロゲン (主にテストステロン) を産生しています。
・陰嚢という薄い平滑筋でできた袋におさまり、体外にぶら下がっています。
→精子は体温よりも低い温度 (33℃くらい)で正常に形成されます。
精巣上体 (副睾丸)
・精子を成熟させます。
精管
・厚い平滑筋の層を持つ管 (長さ30cmくらい) で、 精子を先へ先へと送りだします。
前立腺
・膀胱頸の直下にあり、 栗の実ほどの大きさで、 尿道を輪状に取り巻いています。
・精液の液体成分 (精漿) をつくる腺と平滑筋からできています。
→精液には受精をまっとうさせるためのさまざまな物質が含まれています。
●精子のエネルギー源となる糖分。
●膣内の酸性を中和するアルカリ成分など。
・男性ホルモンにより働きが調節されています。
・精子の通り道は、前立腺で尿道と合流しています。
・前立腺の平滑筋が収縮し射精します。
陰莖
尿道海綿体: 尿道を囲むような海綿体
陰茎海綿体: 陰茎を釣り下げるような海綿体
* 海綿体・・・・・・ 特殊な血管系。 海綿状の血管で、血液が充血することで体積が増大します。
2. 女性生殖器
卵巢
・卵巣は卵細胞を蓄え、卵細胞を成熟させます (卵胞)。
・女性ホルモンの1つの卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌します。
排卵後の卵胞は黄体となり、 黄体ホルモン(プロゲステロン) を分泌します。女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン) や黄体ホルモン(プロゲステロン)は閉経期に分泌量が著明に減少します。 そのため、女性特有の体の不調があらわれたり、骨粗鬆症の原因となったりします。
卵管采
・卵巣の卵胞から排卵された卵細胞を受け止めます。
卵管
・子宮底から左右に向かう長さ10~15cmの管。
・平滑筋でできた管で、内面は粘膜と線毛を持ち輸送管として働きます。
・膣内に射精された精子は、卵管まで泳ぎついて卵管膨大部で受精します。
・受精卵を子宮へと運ぶ線毛運動を行います。
子宮
・膀胱と直腸の間にある前傾前屈の中腔器官で、 子宮上部の広がりを子宮底といいます。
・外膜(腹膜からつながっている膜)、中膜 (平滑筋の層)、内膜 (着床の場となる)
3つの層からなります。
・卵管内で受精した卵細胞 (受精卵) は子宮体部の内膜に着床します。
・中膜の平滑筋は、子宮内で育んだ胎児を分娩時に外に出す原動力となります。
膣
・平滑筋でできた管状の構造。 内面は粘膜で覆われます。
・デーデルライン (桿) 菌により酸性に保たれて、他の菌が繁殖するのを防ぐ防御機
構 (膣自浄作用)を持ちます。
妊娠・分娩・産褥の経過
妊娠の成立
妊娠は、精子と卵子が出会い、受精し、受精卵が子宮に着床することで成立します。
妊娠には7つの条件があり、受精後6~7日ほどで成立します。
妊娠成立7つの条件
①排卵 (卵子の受精能力は24時間)
②卵子が卵管内に取り込まれる
③射精(精子の受精能力は72時間)
④精子が卵管膨大部まで進入する
⑤受精
⑥受精卵が子宮腔内に運ばれる
⑦ 着床 (子宮体部)
妊娠の経過
妊娠22週以後に、 胎児と付属物 (胎盤・臍帯 羊水・卵膜) が子宮から排出されることを分娩といいます。 排出された時期によって呼び方が異なります。
妊娠週数による区分
流産 妊娠21週6日 ( 22週未満) の中絶
早産 妊娠22週0日から妊娠36週6日 ( 37週未満) の分娩
正期産 妊娠37週0日から妊娠41週6日 (42週未満) の分娩
過期産 妊娠40週0日以降の分娩
分娩予定日の判定
一般的には、月経の遅れによる妊娠確認のために受診される方がほとんどです。
この日に着床したと確実に分かることは稀です。
そのため、最終月経、基礎体温、超音波断層法などで妊娠の時期を判断します。
① 最終月経による判定方法 (ネーゲル概算法)
最終月経を含む月に9か月を加えるか、 3か月を引いて分娩予定の月を出します。
そして、 最終月経の第1日に7日を加えて分娩予定日を算出します。
例) 最終月経開始日が1月2日の場合
分娩予定日:
1月 2日
+9か月 +7 日
10 月 9日
分娩予定日:10月9日
例) 最終月経開始日が7月29日の場合
分娩予定日:
7月 29日
-3か月 +7日
4月 36日
→4月は30日までなので
36-30=6 (日) 繰り越し
分娩予定日:5月6日
※この計算方法は、 月経周期を28日としているので、月経周期の長短によって誤差が生じます。
②基礎体温による判定方法
基礎体温上の排卵日から判定する方法です。
基礎体温の排卵日と判定される日に、266日 (280日114日)を加えて分娩予定日
を算出します。(排卵日の月に8を加え、 その日に24を加えると算出できます)
※1 分娩予定日・・・ 「最終月経の第1日に280日 (40週) を加えた日」
※2 月経周期が28日型であれば、 月経初日から14日目に排卵が起こる。
③超音波断層法による判定法
超音波断層法によって、子宮内の胎嚢計測値、胎児頭殿長、児頭大横径の計測値を測定
し、その値から判定する方法です。
子宮の変化
妊娠すると、子宮はどんどん大きく変化していきます。
妊娠週数 | 大きさの目安 |
3週 | 鶏卵大 |
7 週 | 鵞卵大 |
11週 | 手拳大 |
15週 | 腹壁上から子宮体部が触れるようになる |
19週頃 | 胎児触知可能 |
妊娠初期には、受精卵の着床部位は血液の供給が多いため、子宮の他の部位よりも早く発育します。
そのため、子宮は左右対称に大きくならず、この着床部だけが腫瘍ができたように柔らかくふくらんできます。この膨らむ現象をピサチェク徴候といいます。
胎児の成長の指標となる子宮の大きさを知るには、恥骨結合の上縁から腹壁の表面に沿って子宮の底までの長さ(眼底長)を測定します。
正しく測定するためには、しっかりと正しい方法で測定する必要があります。仰臥位で膝を伸ばした状態で、恥骨結合の上縁から子宮底までの長さを巻尺で測ります。
「あっ、動いた!」 突然、 お母さんが言いました。 胎児が動いた (胎動) 瞬間です。
では、いつ頃胎動を感じるのでしょうか? 経産婦と初産婦では、少し違いがあります。
経産婦 16~18週 (妊娠16週は胎盤が完成する週数です)
初産婦・・・ 18~20週
胎児が動いても最初は静かなので、腸の蠕動運動と間違えやすいのですが、経産婦さんは一度経験しているので、初産婦より少し早く胎動に気づきます。
胎児はお腹の中でどのような胎位にあるのでしょうか?
正常な胎位は、胎児の頭部が子宮口に最も近い位置で、これを頭位といいます。
分娩の経過
分娩は、胎児とその付属物が母体から排出される過程です。
分娩第1期から分娩第3期までの過程です。分娩第3期で分娩は終了しますが、胎盤を娩出した後に異常出血が起こることがあり、分娩後2時間程度は分娩室で観察されます。
これを第四期観察分娩といいます。それでは、分娩の各段階の経過をみていきましょう。
第1期は、出産が始まってから子宮口が全開になるまでの期間です。
分娩が近づくと、個人差はありますが、お腹が張ったり、時には痛みを感じたりすることがよくあります。しかし、これは前駆陣痛と呼ばれるもので、分娩が始まったというわけではありません。
陣痛の始まりは、「胎児を出産するまで続く、10分以内または1時間に6回程度の規則的な陣痛(収縮)の周期」と定義されています。
陣痛は子宮口を開かせる原動力であり、分娩が進むにつれて子宮口が開いていきます。
陣痛の第1段階では、破水が起こります。破水とは、卵膜が破れ、羊水が流れ出ることです。
奥の子宮の次が第二期分娩です。
第2期分娩は、子宮口が全開してから胎児が娩出されるまでのことです。
子宮口が完全に開いていると、裂け目から赤ちゃんの頭の一部が見え、陣痛中は見えません。
このように赤ちゃんの頭が部分的に見えることを排臨といいます。これを繰り返すと、間欠的な陣痛のときにも赤ちゃんの頭が見えるようになります。この状態を発露といいます。そして、陣痛と痛みによって胎児は娩出されます。
胎児娩出が終わると、次の段階は胎盤娩出です。
分娩の第3段階は、胎児娩出から胎盤娩出までです。
胎盤が娩出されると分娩は終了します。
分娩開始から胎盤娩出までの所要時間(分娩第1期から分娩第3期までの総時間)が分娩時間です。初産婦の平均分娩時間は12~15時間、経産婦の平均分娩時間は5~8時間です。
この時間の差は、初産婦と経産婦の子宮口の開き方の違いによるもので、助産婦は初産婦の平均半分の時間を要しています。
胎盤が娩出されれば出産は完了し、ほっと一息つくことができますが、異常出血が起こりやすくなります。
しかし、異常出血が起こりやすくなります。第4期分娩では、分娩終了後2時間程度、分娩室で全身状態や出血の状態を観察します。
分娩時の出血量は、第4期分娩とほぼ同じです。分娩時出血量には、分娩第4期までの出血量が含まれます。
500mL 以上は異常出血です。
分娩各期 | 期間 |
分娩第1期 | 分娩開始から子宮口全開大まで |
分娩第2期 | 子宮口全開大から胎児娩出まで |
分娩第3期 | 胎児娩出から胎盤娩出まで |
分娩第4期 | 分娩後2時間まで |
産褥の経過
産褥の定義
分娩が終了し、 妊娠・分娩によって生理的に変化した母体が非妊時の状態に回復するまでの期間 (およそ6~8週間)をいいます。
1. 子宮復古
出産直後の子宮底は臍より横指3本分下にあり、その後時間とともに上昇し、12時間後には臍の高さに到達します。その後、子宮底は再び下降し、産後1日目に臍より横指1本分、3日目に臍より横指3本分、産後10日目以降は腹壁にほとんど接触しなくなります。
悪露
産褥中に子宮および膣から排泄される分泌物を悪露という。
一般的にみられる変化は以下のとおりです。
産褥3日頃まで・・・・・・・・ 赤色悪露
産褥4日~9日頃・・・・・・ 褐色悪露
産褥10日~14日・・・・・黄色悪露
産褥2週~6週・・・・・白色悪露
※悪露の排泄がみられなくなるのと、子宮が非妊時の状態に戻るのがほぼ同じです。
2. 乳汁分泌
胎盤が排出されると、プロラクチンを抑制していたエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少し、プロラクチンの作用が活発になり、 乳腺が乳汁を産生するようになります。 そこに児の乳頭への吸啜刺激が下垂体後葉からのオキシトシンの分泌を促し、乳汁を圧出 (射乳)します。
プロラクチン・・・ 乳汁産生ホルモン (脳下垂体前葉)
オキシトシン・・・射乳ホルモン (脳下垂体後葉)
※オキシトシンは子宮筋も収縮させるので、直接授乳は子宮の復古 (収縮) を促進させます。
※初乳と成乳の違い
①初乳: 蛋白質が多い。 黄身の色。
②成乳 :乳脂肪が多い。 このためエネルギーが高く白っぽい。
遺伝
細胞の中には、「核」があります。
基本的に核は1つの細胞に1つしかありません。
この核の中をよく見ると、細胞分裂のある時期に「染色体」と呼ばれる棒状の構造物が見つかります。
この染色体は、オスとメスで若干の違いがあります。
常染色体と呼ばれる染色体は、男女ともに22対あります。
一方、性染色体にはXとYの染色体があり、女性は「XX」、男性は「XY」の染色体を持っています。
このように、ヒトは23対の染色体(46本)を持っています。この23対の染色体は、もともと両親から受け継いだものです。
両親の卵子と精子が受精してできた受精卵から始まり、細胞分裂を繰り返しながら、私たちの体は形成されていきます。
精子と卵子の染色体は、減数分裂によって体細胞の染色体の半分の23本になります。このうち22本が常染色体である。
このうち22本は常染色体で、精子も卵子も同じ染色体を持っています。
残りの1本は性染色体であり、精子にはXまたはY染色体、卵にはX染色体が含まれます。精子染色体:22+Xまたは22+Y 卵子染色体:22+X。
染色体は、DNA(デオキシリボ核酸)というひも状の物質でできています。
DNAの基本単位は、4つの塩基(アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、グアニン(G))と1つの糖(デオキシリボース)、1つのリン酸で構成されています。この1つの単位を「ヌクレオチド」と呼びますが、実際には膨大な数のヌクレオチドが結合しています。
DNAは2本の鎖からなる「二重らせん」構造をしています。
この巨大なDNAの鎖のところどころに、「タンパク質」の構成要素を含む領域があります。
この領域を「タンパク質コード領域」と呼び、「遺伝子」と呼びます。
DNAは、活性酸素、太陽からの紫外線、細胞内からの放射線などによって損傷を受けます。
しかし、この修復機構がうまく働かないと、ガンの発生など重大な結果を招きます。
つまり、DNAは遺伝情報の暗号帳として非常に重要な役割を担っているのです。
RNAはDNAとは少し違った構造を持っています。
まず、塩基としてチミンの代わりにウラシル(U)が使われ、デオキシリボースの代わりに「リボース」が使われています。
RNAには、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA、トランスファーRNA(tRNA)など、多くの種類が存在します。
それでは、遺伝子からタンパク質が作られる過程を見てみましょう。
まず、新しく作るべきタンパク質のDNAの遺伝子領域をRNAにコピーすることを転写といいます。
コピーされたRNAはmRNAと呼ばれます。
次に、細胞内小器官の一種であるリボソームがこのRNAをデコードします。
デコードとは、タンパク質のレシピ(作り方)を読み取る作業です。
この工程を翻訳といいます。翻訳の際には、tRNAやリボソームRNAも関与し、レシピに従ってアミノ酸が1つ1つつながれ、タンパク質が作られます。
このDNA RNAからタンパク質へという生物学的な原理を「セントラルドグマ」と呼びます。
“DNAが傷つくと、タンパク質も異常をきたすことがあります。
このとき、体のさまざまな部位に遺伝子異常が生じることがあります。
遺伝子の異常のほかに、染色体の異常もあります。
父親と母親から同じ数の染色体が受け継がれますが、何らかの理由で特定の染色体が欠落したり、重複していたりすることがあります。
これもまた、身体に特定の症状を引き起こすことがあります。遺伝子と染色体も非常に重要です。