看護師国家試験出題範囲 目標Ⅱ.看護の対象および看護活動の場と機能について基本的な知識を問う。の『大項目』中に「人間のライフサイクル各期の特徴と生活」があり、『中項目』には今回のタイトルである「思春期」があります。小項目として問われる内容は以下のとおりになります。
- 第二次性徴
- アイデンティティの確立
- 親からの自立
- 異性への関心
思春期は、周囲の影響を受けながら、大人としての自分を確立していく時期です。仲間集団の役割は大きく,この時期の仲間関係の問題は大きな影響を与える。思春期にみられるさまざまな問題行動に対応するためには、子どもの目標や背景要因を理解することが必要です。思春期を理解するためのキーワードは「両価性」です。
精神発達の観点から、小学校高学年から高校生年代の時期に当たり、中学生前半までを思春期前期、それ以後を思春期後期と定義しています。
思春期:10~18歳頃 (第二次性徴の出現から性成熟までの段階)
エリクソンの発達課題
青年期:同一性(自我の確立)
「両価性(アンビバレンツ)」について
思春期を考える上で、ひとつのキーワードとなるのが「両価性(アンビバレンツ)」です。アンビバレンスとは、例えば、ささいなことで母親を罵ったり壁を殴ったりした子供が、数分後にはべったりと甘い仕草を見せるなど、一見矛盾するような態度のことです。
思春期は親からの自立と親への依存の間で揺れ動く時期なので、両価性(アンビバレンツ)が高まります。周囲の大人の役割は、子どもがこの揺れを社会生活の範囲内に収められるようにすることです。子どもが一人で十分に対応できず、それが不登校や身体症状という形で現れている場合は、学校や専門家と「適切な対応」について話し合うことが必要です。教育センター、保健所、児童相談所には、相談機関の案内があります。
子どもは紆余曲折を経て成長していく存在です。周囲の適切な対応により、健全な自我を獲得し、大人として社会に出ていくことができるのです。
第二次性徴
第二次性徴とは
一次性徴とは、出生時に直ちに認識できる男女の生殖器の特徴(男性では睾丸と陰茎、女性では子宮、卵巣、外陰部)のことです。
一方、二次性徴とは、思春期に現れる性器以外の男性・女性の身体部位の特徴のことです。
第二次性徴とホルモン
思春期になると、脳内にある視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を出すよう下
垂体に命令が出されます。すると、下垂体からゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)が分泌され、男
性は精巣、女性は卵巣に作用し、精巣から男性ホルモン、卵巣から女性ホルモンが出されます。
ホルモンは血液によってからだの各部分に運ばれ、男性として、女性としての第二次性徴があらわれ
るようになります。
一般的に最も多い初経年齢は12歳です。
女性のからだの変化
第二次性徴として、以下のような変化が起こってきます。
- 乳房が発達する。
- 陰毛、わき毛が生えてくる。
- 丸みを帯びたからだつきになってくる。
- 初経(初めての月経)が起こる。
- 外性器・内性器(子宮・卵巣・腟・外陰部)が発達する。
男性のからだの変化
第二次性徴として、男性ホルモン=アンドステロン(テストステロン)によって以下のような変化が起こってきます。
- 陰嚢と精巣が大きくなる
- 陰茎が長くなる(11歳半~13歳頃)
- 精管と前立腺が大きくなる
- 陰毛が生える
- ひげとわき毛が生える(陰毛が生え始めてから約2年後)
- 射精できるようになる(通常青年期の中期、12歳半~14歳頃)
アイデンティティの確立
この時期は「自分探し」の時期と言われています。自分はどんな人間なのか?自分はどんな性格なんだろう?自分は何をしたいのか?どんな仕事に就きたいのか(そのためにはどんな学校に行けばいいのか)。
進学や就職について悩まない人はほとんどいないでしょう。また、この時期は、性格診断が好きな若者も多いようです。自分が何者であるかを知ることをアイデンティティの確立(自我の確立・自己同一性の確立)といいます。
あなたは他の誰でもない、あなただけの存在なのです。今の自分、これからの自分を意識すること、つまり、自分が何者かを発見することがアイデンティティの確立につながります。
モラトリアムとは
モラトリアムとは、「アイデンティティの確立を先延ばしにする心理的な猶予期間」を意味します。
以前からあった概念ですが、近年では30歳代まで延長していることがあり問題視されています
親からの自立
エリクソンによれば、学童の発達課題は「勤勉」です。この時期は、親や権威者に素直に反応する時期です。しかし、自我が目覚める思春期になると、親や権威に疑問を持ち始め、親も教師も絶対的な存在ではないことを理解するようになります。その一方で、まだ親に甘え、依存しており、自分自身の葛藤が大きなストレスの原因となります。思春期には、友人や異性との関係が重要になり、親への依存が解消され、干渉が嫌になります。
一方、親はこの変化に生意気に感じたり、不満を感じたりすることが多く、幼児期の第一次反抗期に続いて、第二次反抗期を迎えることによって、やがて子離れする時期であると認識していきます。
異性への関心
フロイトは、性衝動の根底にあるエネルギーを心理的なものと考え、それをリピドーと名付けました。彼によると、学童は性的関心が抑圧された潜伏期であり、思春期以降は異性愛が高まる性器期であるといいます。
第二次性徴が始まる思春期は、自分の体の変化により、性的な興味や意識が高まる時期です。また、集団で異性と付き合うようになり、特定の異性に親密さを求めるようになる時期でもあります。