貧血とは、酸素を運ぶ赤血球の数そのものが減少している状態のことです。
酸素と結合するのは赤血球中のヘモグロビンであり、ヘモグロビンは血色素とも呼ばれます。
ヘモグロビンの量が減ると、全身に酸素が運ばれなくなります。
全身で酸素が不足するため、貧血の症状が現れるのです。
赤血球が少なくなっても、赤血球の中のヘモグロビンがなくなっても、血液中のヘモグロビン濃度(Hb)は共通して低下しています。
貧血は、このヘモグロビン濃度によって診断されます。
貧血の基準: ヘモグロビン濃度
男性: 13g/dL以下
女性: 12g/dL以下
妊婦 : 11g/dL未満
軽度の貧血では症状が出ないことが多いですが、ヘモグロビン値が7g/dL以下になると、症状が出ることが多くなります。
主な症状は、全身の倦怠感、動悸、息切れ、めまい、ふらつきなどです。
1. 鉄欠乏性貧血
通常の貧血症状に加えて、爪がそりかえるスプーンネイル (匙状爪) が特徴です。
ヘモグロビンは鉄分を含みますが、 体内を循環している鉄分は出血や月経によって失われます。
ほかにも偏食による鉄の摂取不足や、見えない出血、つまり消化管の出血などによっても起こります。 若い女性に特に多い貧血です。
2. 巨赤芽球性貧血
血球は核の成熟や増殖にDNAを合成しますが、 このDNAの合成に必要なビタミンB12や葉酸が不足すると、 未成熟で巨大な赤血球 (巨赤芽球) があらわれ、 その多くが骨髄内で死滅します。
ビタミンB12は体内に吸収するために、 胃から分泌される内因子という物質が必要です。
昔、胃を切除した患者に現れる原因不明の貧血として、 悪性貧血とも呼ばれていました。
現在ではビタミンB12を筋肉注射することで治療が可能になりました。
3.溶血性貧血
ふつう赤血球の寿命は120日ありますが、何らかの原因によってもっと短い期間で赤血球が壊れてしまう貧血です。
通常の貧血に加えて、黄疸や脾臓の腫大などもあらわれます。
特に多い原因としては自己免疫性の溶血性貧血です。
治療にはホルモン剤を使ったり、脾臓摘出を行ったりします。
4. 再生不良性貧血
指定難病で、 貧血の中でも最も重い種類の貧血です。
赤血球だけでなく白血球も血小板も減っていくので(汎血球減少)、 免疫力が低下して発熱しやすくなり、皮下出血などの出血傾向もみられます。
そもそも血球を作っている骨髄の機能が失われていくので、根本的な治療は骨髄移植になります。
5. 腎性貧血
腎障害による腎臓でのエリスロポエチン産生能の低下による貧血のことをいいます。
治療には、薬物療法や食事療法が行われます。