合格基準はどうなっている?
1.「必修問題」の80%以上で正答する
必修問題には300点満点のうち50点が配点されており、1問当たり1点です。このうちの80%ですから、必修問題で40点以上を取らないと(40問以上正答しないと)、たとえ一般問題と状況設定問題が満点だったとしても、その時点で不合格となってしまうわけです。
2.「一般問題+状況設定問題」でその年の基準を満たす
一般問題と状況設定問題は合わせて250点満点で、一般問題は1問当たり1点、状況設定問題は1問当たり2点となっており、その合格基準は毎年変動します。厚生労働省が看護師の需給率を勘案して、合格者数を調整するためです。これまでのところは、受験生の90%程度が合格するよう基準が設けられてきました。具体的には、おおむね160~170点(得点率70%弱)程度が合格のボーダーラインとなっています。
合格率が約90%ということからも分かる通り、看護師国試は「優秀な人だけを選抜するための試験」ではありません。むしろ、看護師として必要な最低限の知識を身につけた人であれば、必ず合格できるような内容となっています。とはいえ、広範囲からの出題であることから、時間をかけて学習を積み重ねることは必須。
また、応用力を見る問題が増加傾向にあるため、いわゆる丸暗記スタイルは通用せず、「根拠」や「理由」を理解できるような国試対策を行う必要があります。看護師国試に対しては、必要以上に恐れず、しかし油断せずに向き合う姿勢が大切なのです。
ここだけは押さえたい!最近の出題傾向
ここ数年、問題数や合格基準について大きな変更点はないものの、問題の内容や問われ方に変化があります。特に注意したいポイントを確認していきましょう。
視覚素材を利用した問題の出題
第98回の試験から出題されているのが、症状や検査所見、医療機器・器具の使用方法などについて、視覚素材(写真)を提示する問題です。これまでの出題では、X線写真や人体の写真を用いて疾患名などを答えさせるパターンが多くありました。毎年2~4問程度の出題ではありますが、日頃から意識して教科書などの資料写真に目を通し、確実に得点していきたいところです。
非選択式計算問題の出題
第102回の試験から出題されているのが、選択肢を設けず数値を直接解答させる計算問題です。具体的には、0~9の数字を選択し、3桁の数値を解答させる問題です。選択肢から目星をつけて解答できないという点で難しくなったように感じるかもしれませんが、計算問題としての難易度は従来通り。苦手意識がある人は、早めの対策で克服しておきましょう。
「看護の統合と実践」の変化
第101回より「看護の統合と実践」が新科目として追加されました。「保健師助産師看護師国家試験出題基準」(平成26年版)において、同科目の大項目が「看護におけるマネジメント」「災害と看護」「国際化と看護」の3つに区分され、それまで大まかだった出題範囲が明確化されました。
さらに、第112回以降の試験では、「保健師助産師看護師国家試験出題基準」(令和5年版)に基づいて、「複数科目の知識を統合する能力」「多重課題や集団へのアプローチに必要な広い知識を統合する能力」を問うような出題がなされます。このような出題傾向の背景には、そもそもこの科目の目的である「各分野の知識を統合して実践に生かす」という点を、看護師国試でも重視する流れがあります。「看護の統合と実践」はもちろん、それ以外の科目についても、「なぜこのような症状が起こるのか?」「どうしてこのケアが適切なのか?」といった根拠を踏まえたうえでの、より実践的なアセスメント能力を見るような問題が増加していくと考えられるのです。
五肢択一・五肢択二が難易度を左右する
看護師国試のベーシックな問題形式は四肢択一ですが、五肢択一・五肢択二の問題数も決して少なくなく、十分な注意が必要です。単純に選択肢が多いほど迷いが生じやすく、消去法も通じにくいですし、特に五肢択二は2つの正答肢を選んでやっと正解になるため、四肢択一に比べて難易度が高まります。近年は全問題のうち15~20%が五肢択一・五肢択二となっていることを前提に、対策を練っていきましょう。
いずれは禁忌肢の導入も?
近年、「患者等の生命を直接脅かす行為」「触法行為」「非倫理的な行為」についての出題が強化され、国試の段階で看護師として不適格な人をしっかり選別しようという意図が明確に打ち出されています。それに伴って検討されたことがあるのが、いわゆる禁忌肢の導入。すでに医師国家試験では導入済みで、試験問題中に潜む禁忌肢(その数や、どの選択肢が禁忌肢に当たるかは試験後も公表されない)を選んで一定の回数以上誤答すると、その時点で不合格になるものです。現在のところ看護師国試への導入は見送られていますが、医療安全に対する意識の高まりを受け、今後導入される可能性はゼロではありません。
出題傾向が変わる背景には…
いずれの傾向にも共通しているのが、試験問題をより臨床の状況を反映した内容にしているということ。その背景には、小手先のテクニックではなく、これまで学んだことを本質的に理解している人、本当に看護師としての適性がある人を合格させたいという出題者側の意図が見て取れます。だからこそ、本格的な試験対策をするにあたって、「丸暗記で乗り切ろう」と考えるのは赤信号。これからの看護師国試に合格するために必要な勉強は、現場で活躍できる看護師になるための勉強と、限りなくイコールに近づいているのです。